FIG.01 — 開示形式で「総額のどこまで見えるか」が変わる
「お見積りは来院後に」の裏にある事情
面接前にリサーチをしていたカウンセラー志望者が、応募先候補の3院のホームページを開いて、料金ページを見比べたとします。A院は施術ごとの税込価格に、麻酔代・初診料まで一枚の表にまとめてありました。B院はコースの最安値だけが大きく表示され、内訳は「詳しくはカウンセリングで」とだけ書かれています。C院に至っては金額がひとつも出ておらず、案内は「まずは無料カウンセリングへ」の一文だけでした。同じ自由診療なのに見せ方がここまで違うのは、院の意地悪ではありません。集客のねらいと、開示にどれだけ手間をかけているかの違いです。
開示の粗さには、正当な理由もあります。麻酔の量や薬剤の使用量は症状や部位の広さによって変わるため、あらかじめ一つの金額に決め切れない施術は少なくありません。ですが、最安値だけを大きく見せて内訳を隠す表示と、症状によって金額に幅が出ることを正直に書く表示は、まったく別のものです。厚生労働省は、美容医療の情報提供をきっかけとした消費者トラブルの増加を受けて、平成29年に医療法を改正し、ウェブサイトによる情報提供も広告規制の対象に含めました。料金の見せ方は院の裁量だけで決まっているのではなく、この規制の枠の中にあります。
法律の線 — 「標準的な費用」の開示義務
医療機関のウェブサイトは、原則として広告できる内容が法律で限定されています。ただし、患者が自分から求めて見に行く情報であること、問い合わせ先を明示していることに加えて、自由診療については通常必要とされる治療の内容と費用に関する事項、そして治療の主なリスクや副作用に関する事項を記載すれば、この限定が外れます(医療法第6条の5第3項、医療法施行規則第1条の9の2第3号・第4号)。つまり、施術の効果や術前術後の症例写真まで詳しく書きたい院ほど、標準的な費用の開示も同時に求められる仕組みになっています。料金ページの厚みと、その院がどこまで踏み込んだ広告をしているかは、実はつながっています。
どこまで書けば十分かについて、厚生労働省の事例解説書は具体的な水準を示しています。最安値だけを記載して内訳を書かない、価格帯の下限だけを切り出して別の場所に大きく載せる、別途発生する費用を小さな文字で済ませて具体的な金額を示さない——これらはいずれも開示が不十分な例として挙げられています。麻酔代や初診料が本体価格と別建てになっている料金ページが多いのは、価格を実際より安く見せる意図のこともあれば、施術ごとに金額が変わるための素直な区分のこともあります。読み手は、この二つを分けて見る必要があります。
現場での使い方 — 確認は疑うためではなく、揃えるため
受付やカウンセラーが料金の説明をするとき、法律の裏付けを知っているかどうかで、話し方が変わります。「なぜ表示価格と実際の支払いが違うのか」を患者から聞かれたとき、単に「そういう決まりなので」と答えるのと、麻酔代や初診料が別建てになる理由、症状によって金額に幅が出る理由を順を追って説明できるのとでは、伝わり方がまったく違います。開示の6項目を先に自分の中で整理しておくと、患者の質問にその場で慌てず答えられます。説明の順番を自分の中の型として持っておくと、患者ごとに言うことがぶれる心配もなくなります。
応募先を比べる立場では、料金ページの粗さそのものを、院の姿勢を測る材料として使えます。標準的な費用も別途費用もほとんど書かれていない院は、開示に手間をかけていないか、あるいは金額を前面に出したくない事情があるということです。それだけで良し悪しは決まりませんが、面接で「初診料や麻酔代はどう案内していますか」と尋ねれば、現場が総額をどう扱っているかが見えてきます。開示の薄さは、入職後に自分が矢面に立つ場面の予告でもあります。求人票や院内見学だけでは見えない部分を、料金ページの読み方ひとつで先に確かめておけます。
総額にたどり着く、4つの確認
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① 開示形式を見分ける
定価表型・一部開示型・見積もり一括型のどれか。見積もり一括型は来院後まで総額が出ないので、まず「今いくらまで見えているか」を把握する。
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② 別料金を洗い出す
麻酔代・初診料・指名料・薬剤代は本体価格と別建てのことが多い。麻酔代・初診料だけで別途1〜3万円になるケースもある。
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③ 税込・初回・通常を分ける
同じ数字でも税抜か税込か、初回か通常かで意味が変わる。初回と通常の差は別ページで深掘りする。
→ 初回価格と通常価格の差 -
④ 6項目をメモにする
税込・通常・初診料・麻酔代・指名料・薬剤代の6項目を1枚にすると、院をまたいで同じ土俵で比べられる。
現場で、この読み筋を当てる
「ホームページの金額と違います」と聞かれたとき
求人票 カウンセリングに来た患者から、「サイトには◯◯円と書いてあったのに、見積もりはもっと高い」と聞かれた。担当したのは新人カウンセラーで、料金ページのどの数字がどこまでの範囲を指しているのか、自分でも整理できていなかった。
読み筋 焦って謝る前に、まず表示されていた金額がどの型だったかを確かめます。一部開示型なら「最安の一例」を載せていることが多く、麻酔代・初診料、施術する部位の数で金額は変わります。総額との差がどの項目から生まれているかを一つずつ示せば、不誠実さの話ではなく、条件の違いの話として説明できます。
SNS広告の金額と、ホームページの金額が違う
求人票 SNS広告では「初回9,800円〜」と出ていた施術が、同じ院の公式サイトの料金ページでは「1回30,000円〜」と書かれていた。応募を検討していた求職者が、この不一致に不信感を持った。
読み筋 SNS広告は初回限定・条件付きの最安値を切り出して見せることが多く、通常料金とは別枠のことがあります。両方の数字が「初回か通常か」「1部位か全体か」のどの条件のものかを先に確認する姿勢が要ります。初回と通常の差そのものは、料金ページを読む段階では脇に置いて構いません。
見積もり一括型の院で「結局いくらなんですか」と聞かれる
求人票 見積もり一括型の院に勤める受付が、来院前の電話で「だいたいでいいので金額を教えてください」と聞かれた。ホームページには金額がひとつも出ていないため、答えに詰まってしまった。
読み筋 「分かりません」で終わらせず、総額を決める条件を先に伝えます。部位の数、麻酔の有無、コースか単発かなど見積もりに影響する項目を挙げて、「その条件が分かれば概算をお伝えできます」と返せば、患者は次に何を伝えればよいかが分かります。金額を出せないことと、説明できないことは別です。
やりがちな誤読
NG 料金ページの一番大きい数字だけを見て、「ここは安い」「ここは高い」と院を比べる。
読み直す その数字が定価表型の総額なのか、一部開示型の最安値なのか、見積もり一括型の目安なのかを先に確かめます。型が違えば、同じ「30,000円〜」でも意味が変わります。
型をそろえずに金額だけ比べると、実際には同じ水準の院を「高い」「安い」と誤って判断することがあります。
NG 麻酔代や初診料が書かれていない料金ページを見て、「後出しで請求される」と決めつける。
読み直す 書かれていないことと、請求されないことは別です。「麻酔代・初診料は別途かかりますか」とカウンセリングで確認し、金額まで聞いておきます。
一部開示型は情報を絞っているだけで、開示していない項目が無料とは限りません。確認前の思い込みは避けます。
NG 初回価格の安さだけを見て「ここが一番お得」と患者に案内し、通常価格を確認しないまま話を進める。
読み直す 初回価格と通常価格は別物として扱い、2回目以降いくらになるかを先に確認してから案内します。院を比べるなら、通常価格に切り替わった後の金額で比べます。
初回と通常の差は別記事で扱いますが、料金ページを読む時点で「これは初回価格か、通常価格か」を分けて見る癖をつけておくと、後の説明がぶれません。
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あなたの立場で読む
面接前に読むと、カウンセラーや受付がなぜ総額確認を重視するかが分かる。見積もり一括型の院では来院前に総額が出ないため、説明力が採用でも評価される。
患者説明では、表示価格、通常価格、別料金、支払い条件を同じ順番で確認する。定価表型なら比較しやすいが、見積もり一括型では来院後まで総額が出ない点を先に案内する。
実在の料金ページを1つ開き、定価表型・一部開示型・見積もり一括型のどれかを判定する。そのうえで、総額に必要なのに載っていない項目(麻酔代・初診料・指名料など)を3つ書き出す。