ウォッチドッグ月報

行政処分・注意喚起の定点観測

2026年7月版

MONTHLY WATCH

美容医療 ウォッチドッグ月報

消費者庁・国民生活センター・厚生労働省を月次で巡回し、措置命令・相談動向・広告規制の動きを整理します。扱うのは公的機関の公表事実だけで、特定のクリニックを断罪する記事ではありません。

このページの立場: 取り上げるのは、消費者庁・国民生活センター・厚生労働省が公表した事実だけです。編集部が独自に疑惑を追及したり、特定のクリニックを名指しで批判したりすることはしません。事例として名前が出る医療法人は、いずれも公的機関が措置命令等を公表した先のみです。

01|処分・命令

消費者庁の「景品表示法関連報道発表資料」「新着情報」を巡回した範囲では、2026年6月・7月に医療法人・美容クリニックを対象とした新規の措置命令の公表は見つかりませんでした(確認日: 2026年7月10日)。今月は「新規事例なし」です。

隣接分野では、消費者庁が2026年3月25日、エステティックサロンの運営事業者3社に対して景品表示法に基づく措置命令を行いました。3社が供給する施術サービスに係る表示について、それぞれ有利誤認(景品表示法第5条第2号)に該当する行為が認められたとされています。対象は医療機関ではなくエステティックサロンですが、施術サービスの表示という点で美容医療にも関わりのある動きです。

過去には、医療機関を対象にした措置命令も出ています。2024年6月には医療法人社団祐真会が、ステマ規制(不当景品類及び不当表示防止法上の指定告示)の全国初適用となるクチコミ操作で措置命令を受けました。2025年3月には医療法人社団スマイルスクエアが、クチコミ割引を通じたステルスマーケティングで措置命令を受けています。いずれも公表資料の一次情報で確認できます。

02|相談動向・注意喚起

国民生活センターは、美容医療サービスに関する相談件数の推移を定点公表しています(PIO-NET登録ベース、ページ更新は2025年8月1日)。年度ごとの件数は、2022年度3,798件、2023年度6,281件、2024年度10,717件と増え続けており、2025年度も同年5月31日時点で809件(前年同期662件)と、前年を上回るペースで推移しています。

同ページが挙げる最近の相談事例には、美容注射の契約でリスクの説明がなかったという申し出、包茎手術のカウンセリングで「今契約すれば安くなる」と契約を急がされたという申し出、SNS広告経由の痩身施術で不審な医薬品を処方されたという申し出などがあります。いずれも相談者の申し出内容にもとづく紹介で、事実認定を示すものではありません。

年度相談件数備考
2022年度3,798件通年
2023年度6,281件通年
2024年度10,717件通年
2025年度809件2025年5月31日時点。前年同期662件

若い世代に限った定点データも公表されています。国民生活センターが2026年5月27日に公表した「18歳・19歳の消費生活相談の状況」によると、2025年度の18歳・19歳の相談10,250件のうち、商品・役務別では「脱毛エステ」が704件で2位、「医療サービス(美容医療など)」が427件で4位でした。18歳で親の同意なく契約できるようになって以降、美容関連の相談が上位を占める傾向は例年続いています。

03|制度改正の動き

厚生労働省の「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」は、第7回(2026年3月26日開催)で「医療等に関する広告規制について」を議題にしています。第6回(2026年1月26日・持ち回り開催)では「オンライン診療に関する広告等について」が扱われました。医療広告規制のルールは、この分科会での議論を経て改定されることがあるため、開催のたびに議題を確認しておく価値があります。

法律のレベルでも動きがあります。医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)の一部が2026年4月1日に施行され、保険医療機関の管理者となるには原則、臨床研修のあとに病院で3年以上保険診療に従事した経験などが必要になりました。同じ改正法には、美容医療を行う医療機関に安全管理措置の報告を義務づける規定も含まれていますが、こちらの施行日は「公布後2年以内の政令で定める日」とされており、まだ施行されていません(2026年7月時点)。報告の中身や運用は、今後の政令・省令で決まります。

分科会の次回開催や、報告義務に関する政令の公布は、当ラボが月次巡回で継続的に確認します。新しい規制の動きが出た場合は、翌月以降の月報で取り上げます。

04|読者がとれる対策

行政処分や注意喚起は、契約してしまってからでは遅いことがほとんどです。カウンセリングの前後で、次のような確認をおすすめします。

  • 「今日契約すれば安くなる」といった急かし文句は、契約を急ぐより先に一度持ち帰って検討する。初回価格・モニター価格の条件チェックも参考にしてみてください。
  • クチコミ・SNSの評価は、割引や特典と引き換えの投稿でないかを意識する。
  • 表示価格の他にかかる費用(麻酔代・薬代・再診料など)を、契約前に総額で確認する。美容医療の料金開示はどこを見る?で確認ポイントを整理しています。
  • 前払いのコースやローンは、途中解約・クーリングオフの条件を確認しておく。美容医療の解約とクーリングオフも参照してみてください。
  • 不安に感じたら、契約前でも消費者ホットライン「188(いやや!)」に相談できます。

05|困ったときの相談窓口

美容医療で「困った」と感じたとき、内容によって相談できる窓口は変わります。契約・お金のトラブルと、仕上がりや医療行為そのものへの不安は、実は別の制度です。まずは早見表で、自分の相談内容がどこに近いかを確認してみてください。

困りごと別の相談窓口 早見表
困りごとの内容相談先備考
契約・返金・強引な勧誘などのトラブル 消費者ホットライン188(いやや) 国民生活センターの案内で最寄りの消費生活センターにつながります。相談は無料です。
仕上がり・医療行為そのものへの不安 医療安全支援センター(都道府県・保健所設置市等の相談窓口) 188の消費生活相談とは別の制度です。医療安全支援センター総合支援事業で最寄りの窓口を確認できます。
医薬品・医療機器による健康被害 PMDA救済制度相談窓口(0120-149-931) 医薬品副作用被害救済制度は、国内で承認された医薬品等が対象です。未承認機器については脱毛機の承認地図などで確認してみてください。
院の閉院・倒産で、前払い金がどうなるか気になる (このページ内で解説) 「院の閉院・倒産と前払い金」を参照してください。

FIG. 01 — 困りごとの内容と相談窓口の対応

状況に合わせて、相談先を選ぶ 契約・返金・ 勧誘トラブル 仕上がり・医療 行為への不安 医薬品・機器での 健康被害 院の閉院・ 倒産のとき 消費者ホットライン 188 (いやや)通話無料 医療安全支援センター 都道府県の窓口 (188とは別) PMDA救済制度 相談窓口 0120-149-931 前払い金の扱いは 次項で解説 (このページ内) ※ 医療安全支援センターは、188(消費者ホットライン)とは別の制度です。 ※ 医薬品副作用被害救済制度は国内承認品が対象です。未承認機器は個別ページで確認できます。
図1契約・返金の悩みは消費者ホットライン188、仕上がり・医療行為への不安は医療安全支援センター、医薬品・医療機器の健康被害はPMDA救済制度相談窓口へ。院の閉院・倒産は次項の前払い金の解説を参照してください。

院の閉院・倒産と前払い金

通っていたクリニックが閉院したり、事業を続けられなくなったりすると、契約時に前払いしたコースの残り回数分がどうなるのか気になるところです。ここでは、一般的な制度の枠組みだけを整理します(個別の返金を約束するものではありません)。

クリニックが法人として破産手続に入った場合、前払い金の返還を求める権利は「破産債権」として扱われることがあります。破産法(e-Gov法令検索)には、債権者が破産管財人に対して債権の内容を届け出る「債権届出」という手続きが定められています。届け出たからといって前払い金の全額が必ず戻ってくるわけではなく、配当があるかどうか、いくら戻るかは、その院の資産状況によって変わります。

医療ローンを組んでコースの費用を分割払いにしていた場合は、施術を受けられなくなった分についても、支払いが自動的に止まるとは限りません。信販会社への支払いを止められる余地があるかどうかは、医療ローンの読み方で紹介している「支払停止の抗弁」の条件に当てはまるかによって変わります。心配な場合は、信販会社と消費者ホットライン188の両方に相談してみてください。

契約の時点でできる自衛策もあります。回数の多いコースをまとめて前払いするより、都度払いや少なめの回数から契約を始めるほうが、前払い金が残った状態で閉院・倒産に遭うリスクを小さくできます。

医師・クリニックの実在確認

施術を担当する医師が医師免許を持っているか、そのクリニックが正規に開設された医療機関かどうかは、契約前に確認できる方法があります。

医師・歯科医師の資格は、厚生労働省の医師等資格確認検索で、氏名・生年月日などを入力して調べられます。2年に1度の届出をもとにした情報のため、届出内容によっては検索結果に出てこない場合もあります。

クリニックの開設については、診療所を開設する際に保健所へ届け出る仕組みがあります。厚生労働省の医療機能情報提供制度による「医療情報ネット(ナビイ)」では、都道府県に報告された医療機関の基本情報を検索できます。気になるクリニックが出てくるか、契約前に見ておくのも一つの方法です。

いずれの確認も、施術の技術力や仕上がりの良し悪しを保証するものではありません。あくまで、免許や開設の有無を確認する手段のひとつとして参考にしてみてください。

06|巡回した情報源

今月の月報を作るにあたって確認した一次情報です。各リンク先で公表内容の全文を確認できます。

  1. 消費者庁「景品表示法関連報道発表資料 2026年度」 巡回日 2026年7月10日。医療法人・クリニックを対象とした新規の措置命令は確認できませんでした
  2. 消費者庁「新着情報 2026年度」 巡回日 2026年7月10日
  3. 消費者庁「エステティックサロンの運営事業者3社に対する景品表示法に基づく措置命令について」 公表日 2026年3月26日(措置命令日 2026年3月25日)
  4. 消費者庁「医療法人社団祐真会に対する景品表示法に基づく措置命令について」 公表日 2024年6月
  5. 消費者庁「医療法人社団スマイルスクエアに対する景品表示法に基づく措置命令について」 公表日 2025年3月
  6. 国民生活センター「美容医療サービス(各種相談の件数や傾向)」 ページ更新 2025年8月1日。PIO-NET登録件数の推移を掲載
  7. 厚生労働省「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」 巡回日 2026年7月10日。第7回(2026年3月26日)まで開催資料を確認
  8. 国民生活センター「18歳・19歳の消費生活相談の状況-2025年度-」 公表日 2026年5月27日
  9. 厚生労働省「保険医療機関の管理者の要件・責務について」 医療法等改正法(令和7年法律第87号)のうち2026年4月1日施行分(保険医療機関の管理者要件)の案内。巡回日 2026年7月11日
  10. 厚生労働省「医療法等の一部を改正する法律」の公布及び一部施行について(通知) 医政発1212002号(令和7年12月12日)。美容医療を行う医療機関の安全管理措置の報告義務の条文と、施行予定(公布後2年以内の政令で定める日)を確認できます
※このページは、公的機関が公表した情報を事実として整理したものです。特定の施術・薬剤・機器・クリニックの安全性や違法性を断定するものではありません。相談事例は申し出内容にもとづくもので、事実認定を示すものではありません。最新の公表状況は各機関の一次情報でご確認ください。誤りに気づいた場合の連絡先は編集方針・訂正ポリシーを参照してください。

契約前に、もう一度立ち止まって確認しよう。

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