FIG.01 — 承認番号の有無で、救済制度の扱いが分かれる
「安い理由」の分かれ目は、承認の有無にある
新しい脱毛機や注入剤の勉強会に出ると、代理店の担当者が「海外ではもう何年も使われています」「有効成分は国内承認品と同じです」と説明することがあります。実績の話を聞くと安心してしまいますが、そこで確かめるべきことは一つです。この製品は、日本国内で承認を受けているか。効果や実績の話と、承認の有無はまったく別の軸にあります。まずPMDA(医薬品医療機器総合機構、国内での承認可否を審査する機関)で製品名や型番を検索し、承認番号があるかどうかを確認する。ここがすべての出発点です。
なぜ未承認のまま流通する製品があるのでしょうか。国内で承認を受けるには、製造販売業者が臨床試験などのデータをそろえてPMDAの審査を受け、厚生労働大臣の承認を得る必要があります。この手続きには時間もお金もかかります。海外ですでに広く使われている製品でも、日本向けの手続きを終えていなければ、国内では未承認のままです。価格が安いことの理由の多くは、性能の差ではなく、この手続きを経ているかどうかの差にあります。「なぜ安いのか」と聞かれたとき、まず思い出したいのはこの構造です。
「個人輸入」にも、手続きを踏んだものとそうでないものがある
未承認の製品を国内で使うことが、常に違法というわけではありません。医師が治療の目的で、自分の責任のもとに未承認の医薬品・医療機器を輸入して使うことは、決められた手続きを踏めば認められています。その手続きの中心にあるのが輸入確認証(未承認の医薬品・機器を治療目的で輸入するときに、地方厚生局から交付される確認書類)です。令和2年9月1日から、それまでの薬監証明に代わってこの制度に切り替わりました。貨物が輸入される区域によって申請先の地方厚生局が分かれており、そこに申請して確認証の交付を受けてはじめて、医師の責任のもとで使うことができます。
つまり、同じ「個人輸入」という言葉でも、この手続きを踏んでいる輸入と、書類を通さずに入ってきた製品とでは、位置づけが違います。現場で機器や製剤の説明を受けるときに確認できるとよいのは、「未承認かどうか」だけでなく、「どの経路で、どんな手続きを経て院に来ているか」です。ここが曖昧なまま仕入れている製品は、価格の安さだけでなく、その先の安全確認の体制にも疑問符がつきます。仕入れの詳細まで把握する必要はなくても、「うちの院はどちらか」を一度、管理者に確認しておく価値はあります。
輸入確認証を得ていても、それは国内承認そのものではありません。医薬品副作用被害救済制度(副作用による健康被害を国が金銭面で救済する制度)は、承認を受けた医薬品を前提にしており、輸入確認証を得て使われた未承認品であっても対象の外に置かれます。手続きを踏んでいることと、承認を受けていることは別の話だと覚えておいてください。
説明とSNS発信で、何を明示すべきか
未承認の製剤や機器を自由診療で使うこと自体は、手続きを踏んでいれば認められています。ただし、それを広告やホームページ、SNSで紹介するときには、別の線が引かれています。未承認であることを隠したまま効果や性能だけを語る書き方は、医療広告としての規制に触れるおそれがあります。逆に、必要な情報をそろえて明示すれば、未承認の製品について書くこと自体はできます。何をそろえるかを知っておくと、患者さんへの説明でも社内資料でも、迷わず線を引けるようになります。
具体的には、未承認である旨、どんな経路で入手しているか、国内に承認済みの同等品があるかどうか、そして海外での安全性に関する情報です。副作用が起きた場合に公的な救済制度の対象外であることも、あわせて伝えたい情報の一つです。これらをそろえずに「よく効く」「人気」とだけ書くと、効能効果や性能を誇張して伝える広告として読まれるおそれがあります。カウンセリングの場でも同じで、口頭であっても未承認であることと入手経路には触れておくと、あとで「聞いていない」という食い違いを防げます。
承認状況を、この順で確かめる
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① PMDAで製品名検索
機器名・製剤名をPMDAで検索し、国内承認の有無を確認する。
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② 承認番号を見る
承認番号があるか。無ければ国内未承認として扱う。
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③ 入手経路を分ける
個人輸入か、医師の責任輸入か。安い理由がここにあることが多い。
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④ 救済制度の扱い
未承認品は医薬品副作用被害救済制度の対象外。名称・効能効果・性能・価格誘導を広告文脈で扱う前に、この前提を添える。
→ SNS運用と医療広告ガイドラインの基本
現場で、この読み筋を当てる
「この機械、よそより安いですが同じものですか?」と聞かれたとき
求人票 カウンセリング中、他院の料金表を見せられて「これ、同じ機械ですよね?」と聞かれる。機種名は似ているが、型番や表記が微妙に違う。
読み筋 型番や表記が違う場合、別の製品である可能性があります。名前が似ているだけで安易に「同じです」と答えず、PMDAで型番から承認状況を確認できるまでは、「型番が違うので、今この場ではお答えできません」と保留にするほうが誠実です。安さの理由が承認の有無にあることも珍しくありません。
新製品の説明会で「国内未承認ですが」の一言だけで流れたとき
求人票 メーカーの説明会。効果の症例写真とデータの後に、資料の隅に小さく「国内未承認」の文字。口頭での説明はなく、質疑応答でも触れられなかった。
読み筋 未承認かどうかは、資料の隅の注記で終わらせてよい情報ではありません。院として導入するなら、輸入確認証の有無、入手経路、そして患者さんへの説明で何を明示する必要があるかを、その場で担当者に確認しておく。あとから「聞いていなかった」にしないための最初の機会です。
SNSで見かけた「未承認だけど話題」の投稿
求人票 同業者のSNS投稿で、ある注入剤について「見たことのない仕上がり」「国内未承認だけど今いちばん話題」と、効果だけが強調されていた。未承認である旨以外の情報はなかった。
読み筋 未承認の製品を紹介すること自体が一律にだめなわけではありません。ただ、入手経路や国内承認品の有無、海外での安全性情報を添えずに効果だけを伝える投稿は、広告としての規制に触れるおそれがあります。院の公式アカウントで同じような投稿をする前に、何を明示すべきかを確認する習慣をつけてください。
やりがちな誤読
NG 「海外セレブも使っている有名な製剤です」と、未承認である旨を伝えずに効果だけを説明する。
読み直す 「この製剤は国内では未承認です。医師の責任のもとで輸入されたもので、国内に承認された同等の製品もあります」と、承認状況とあわせて伝える。
効果の説明が先に立つと、未承認であることが後回しになりがちです。承認状況は、効果の説明とセットで最初に伝える情報です。
NG 型番や製品名が似ているという理由だけで「よそと同じ機械です」と答えてしまう。
読み直す 型番まで一致するかをPMDAで確認してから答える。分からないときは「確認してからお答えします」と保留にする。
名前が似ていても、承認を受けている型番と受けていない型番が並行して流通していることがあります。
NG 「輸入確認証を取っているから、この製品は国内承認と同じように扱ってよい」と考える。
読み直す 輸入確認証は、医師の責任で使うための手続きであって、国内承認そのものではないと理解しておく。副作用が起きたときの公的救済制度の対象にもならないことを、患者さんへの説明にも含める。
手続きを踏んでいることと、承認を受けていることは、別の話です。混同すると、説明にも抜けが出ます。
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あなたの立場で読む
入職前に読むと、価格差の主因が製剤の承認区分にあること、院が免責を明示するかどうかの差が分かる。
説明では、承認状況を確認できる範囲と、医師に確認すべき範囲を分ける。
機器名または製剤名を1つ選び、PMDAで製品名検索して承認番号の有無を確認する。未承認なら、名称や効能効果・性能を広告的に見せず、救済制度の対象外である旨を添えて言い換える。