先に読むと理解が早い
FIG.01 — 月収例を3層に分け、歩合は4軸で見る
歩合は、院の設計図の写し絵
なぜ美容クリニックの給与には歩合が多いのか。答えは、院のお金の流れにあります。自由診療は、広告費をかけて来院してもらい、カウンセリングで成約して、はじめて回収できる商売です。売上は月によって波があり、院はその波を全部ひとりで抱えたくない。そこで「売上を作った人に、あとから分配する」歩合という形で、良い月も悪い月もスタッフと分け合います。歩合が厚い求人ほど基本給が薄くなりがちなのは、意地悪ではなく、波の置き場所を院からスタッフ側へ移した設計だからです。
そして、歩合の算定基準は、現場の毎日の動きまで決めます。売上に対して付く院では、高いコースを勧める力が自然と働きます。件数に付く院では、回転の速さが優先になります。粗利(売上から材料費などを引いた残り)に付く院では、値引きに厳しくなります。どれが正解という話ではありません。ただ、自分の院がどの基準かを知っていると、上から降りてくる指示が「なぜその指示なのか」まで読めるようになります。ここが読めると、数字との付き合い方が受け身ではなくなります。
FIG.02 — 算定基準で、現場の動きが変わる
法律の線 — 「完全歩合」と「罰金」には決まりがある
雇用契約で働く人には、法律の守りがあります。労働基準法27条は、歩合制(出来高払制)で働く人にも、働いた時間に応じた一定額の給料(保障給)を保障するよう定めています。つまり「売上ゼロの月は給料もゼロ」は、雇用では通りません。最低賃金も同じように適用されます。
気をつけたいのは「業務委託」の契約です。雇用ではなく委託になると、保障給・最低賃金・残業代という守りが外れます。「業務委託で完全歩合、青天井」という募集の分かれ目はここです。ただし、契約書の名前だけでは決まりません。シフトや出勤時間が院に決められていて、指示を受けて働いているなら、実態は雇用(労働者)として扱われることがあります。
歩合にも、残業の割増は付きます。計算の仕方は月給の部分と違いますが、「歩合だから残業代はない」は誤りです。
もうひとつ、罰金型のマイナスにも線があります。目標未達で給料から「罰金」を引く——これは無制限にはできません。減給の制裁には上限(1回につき平均賃金の1日分の半分まで、合計でその月の給料の1割まで)が法律で決まっています。明細に説明のない天引きを見つけたら、まず賃金規程を確かめて、おかしいと感じたら労働基準監督署に相談してください。
FIG.03 — 雇用と業務委託、守りの線はここ
歩合の設計は、職場の空気まで決める
個人歩合が強い院では、数字が同僚との競争になりやすい。新規の患者さんをだれが担当するかで、待機室の空気が張りつめる——そんな光景は、個人の性格ではなく設計から生まれます。チーム歩合なら競争は和らぎますが、こんどは自分の頑張りが数字に出にくくなります。どちらにも良さと副作用があります。
指名料の設計にも、裏側があります。指名が付くのは嬉しいこと。でも、指名が自分に集中すると、休みにくくなります。指名の多い先輩が休めていない院は、数年後の自分の姿かもしれません。見学に行けるなら、いちばん売れている人がちゃんと休めているかを見てきてください。
だから、この記事の結論は最初に戻ります。上振れではなく、下限で選ぶ。歩合ゼロの月に暮らせる基本給か。そして歩合の設計は、給料の額だけでなく、毎日の空気まで決めています。数字の条件を確かめることは、お金の話であると同時に、働く環境を確かめることでもあります。
求人票の前に、報酬を分解する
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① 給与を3層に分ける
基本給・変動給(歩合)・固定残業代の3層でできている。求人の「月収例」は3層が満額そろった最大値のことが多い。まず基本給と歩合を分ける。
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② 歩合を4軸で見る
支給対象(個人/チーム/指名)・算定基準(売上/粗利/件数)・支給タイミング(当月/翌々月)・未達時の扱い。同じ歩合率でも手取りは変わる。
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③ 固定残業代を割り戻す
「基本給25万」が、20万+固定残業5万のことがある。何時間分でいくらかの内訳を確認する。
→ 美容クリニック求人票の読み方 -
④ 下限で判断する
上振れ幅より、歩合ゼロの月の手取りが生活の下限を決める。そこを基準に選ぶ。
現場で、この読み筋を当てる
面接で「歩合は頑張り次第です」と言われたとき
求人票 歩合の仕組みを質問したら、「頑張り次第でどんどん増えますよ。先月は歩合だけで20万円の子もいました」と、いちばん良い例だけが返ってきた。
読み筋 「頑張り次第」は、仕組みの説明ではありません。聞くのは4つだけ。何に対して付くのか、だれの数字か、いつ支払われるか、付かない月はどうなるか。この4つにすっと答えられない院は、制度が紙になっていないのかもしれません。
「業務委託・完全歩合で月100万円も」の募集
求人票 SNSで見かけたカウンセラー募集。「雇用ではなく業務委託。完全歩合制。頑張った分だけ青天井」。
読み筋 業務委託の契約は、最低賃金や保障給といった、雇用で働く人を守る決まりの外側です。売上ゼロなら収入ゼロもありえます。ただし、名前は委託でも、シフトが決められていて院の指示を受けて働くなら、実態は雇用として扱われることがあります。サインする前に、どちらの働き方なのかを確かめます。
「試用期間中は歩合が付かない」と、入ってから知った
求人票 「歩合あり」に惹かれて入職。初月の給与明細を見ると、歩合の欄はゼロ。聞くと「試用期間の3ヶ月は対象外です」。求人票にその一文はなかった。
読み筋 歩合がいつから付くかは、求人票に書かれていないことが多い項目です。これから入る人は面接で、もう働いている人は賃金規程で確かめられます。就業規則や賃金規程は、働く人がいつでも見られるようにしておく決まりになっています。
やりがちな誤読
NG 「歩合5%のA院と3%のB院なら、A院のほうが稼げる」と、率だけで比べる。
読み直す 同じ5%でも、売上の5%と粗利(売上から材料費などを引いた残り)の5%では、額が変わります。何に・だれの数字に・いつ・付かない月はどうなるか。4軸を揃えてから比べます。
率は4軸のひとつでしかありません。それに、歩合率の高さは基本給の低さとセットのこともあります。
NG 歩合ゼロの月が続いて、「自分の頑張りが足りない」とひとりで抱え込む。
読み直す 先に仕組みの側を見ます。来院数・メニューの単価・季節の波は、ひとりの頑張りでは動かせません。面談には直近3ヶ月の実数(担当数・成約・指名)を持ち込んで、数字で話します。
数字が落ちる理由の多くは、設計と季節にあります。人ではなく仕組みを見る——ノルマの記事と同じ結論です。
NG 給与明細の歩合欄に説明のない増減があるけれど、「聞くと角が立つ」と黙っておく。
読み直す 「今月の歩合の内訳を教えてください」と、事実確認として聞きます。自分の給料がどう計算されたかは、確認してよいものです。
感情ではなく数字の質問なら、角は立ちにくいもの。それでも説明のない状態が続くなら、労働基準監督署など外の窓口があります。
YOUR VIEW
あなたの立場で読む
院の収益設計(客単価・成約率・回転数)を先に把握すると、歩合設計がなぜその条件になるかが逆算できる。
評価面談前に、直近3ヶ月の売上・指名・再来の実数をメモして持ち込む。数字で問えば評価の内訳が引き出しやすい。
求人票1枚から、基本給・歩合対象・支給タイミング・未達時の扱い・固定残業代を抜き出す。上振れ幅より先にこの順で見る理由を書く。
章末クイズ
読み終えた目で、現場の場面を8問。ぜんぶ答えると結果が出ます。
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Q1
架空の給与明細(図)を見てほしい。正社員(歩合制)で月給25万円、先月の歩合は20万円だったのに、今月の歩合は理由の説明もなく0円になっている。この状況で、まず取るべき行動はどれか。
FIG.Q — このケースを見立てる
感情ではなく数字についての質問なら、角は立ちにくいものです。あなたの給料がどう計算されたかは、確認してよいことだと本文は述べています。説明のない状態が続くなら、労働基準監督署のような外の窓口も選べます。
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Q2
同じ図のケースについて考えてみよう。今月の歩合が0円であることは、歩合制で働く人にも一定額の保障給を求める労働基準法27条に違反しているか。
労働基準法27条が保障するのは、働いた分に応じて必ず支払われる一定額の給料(保障給)です。この明細では月給25万円が歩合とは別枠で固定支給されているため、歩合部分だけがゼロでも直ちに違反にはなりません。雇用形態の欄には「正社員」とあり、業務委託ではない点も見落とせません。
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Q3
面接で歩合について尋ねたら、「頑張り次第でどんどん増えますよ」とだけ返ってきた。良い例だけでなく仕組みを知るために、次に聞くべきことはどれか。
「頑張り次第」は仕組みの説明ではありません。聞くべきは、支給対象・算定基準・支給タイミング・未達時の扱いという4つの軸だけです。この4点にすっと答えられない院は、制度が紙になっていないのかもしれません。
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Q4
「歩合5%のA院と3%のB院なら、A院のほうが稼げる」という考え方の何が問題か。
同じ5%でも、売上に対する5%と粗利に対する5%では手にする額が変わります。歩合率の高さは基本給の低さとセットになっていることもあり、率だけを並べても実態は見えません。比べるなら、支給対象・算定基準・支給タイミング・未達時の扱いという4軸をそろえてからにしましょう。
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Q5
歩合がゼロの月が続き、「自分の頑張りが足りないのかもしれない」と感じている。本文がすすめる考え方はどれか。
数字が落ちる理由の多くは、ひとりの頑張りではなく設計と季節にあります。まずは来院数や単価といった仕組みの側を見て、直近3ヶ月の担当数・成約・指名といった実数を面談に持ち込みましょう。数字で話せば、評価の内訳が引き出しやすくなります。
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Q6
求人票に「月収例45万円」と書かれているのを見た。本文の考え方に沿うと、どう受け止めるべきか。
給与は基本給・変動給(歩合)・固定残業代の3層でできていて、求人の「月収例」は3層が満額そろった最大値であることが多いものです。まず基本給と歩合を分け、次に固定残業代が何時間分でいくらなのかの内訳を確かめましょう。上振れの金額より、歩合ゼロの月に手元に残る額のほうが判断の基準になります。
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Q7
SNSで「業務委託・完全歩合、月100万円も」という募集を見つけた。契約する前に確かめるべきことはどれか。
業務委託の契約は、最低賃金や保障給といった雇用を守る決まりの外側にあり、売上ゼロなら収入ゼロもありえます。ただし、シフトが決められて院の指示を受けて働いているなら、名前が委託でも実態は雇用として扱われることがあります。サインする前に、自分がどちらの働き方をするのかを確かめましょう。
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Q8
入職後、初月の給与明細を見たら歩合の欄がゼロだった。理由を尋ねると「試用期間の3ヶ月は歩合の対象外」と言われた。この状況について正しいのはどれか。
歩合がいつから付くかは、求人票に書かれていないことが多い項目です。これから入る人は面接で、すでに働いている人は賃金規程で確かめられます。就業規則や賃金規程は、働く人がいつでも見られるようにしておく決まりになっています。
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