先に読むと理解が早い
FIG.01 — 初回価格は入口、通うなら2回目以降を見る
なぜ、同じ施術なのに初回だけ安いのでしょうか
同じクリニックの同じ施術なのに、初回だけ大きく値引かれている広告を見て、不思議に思ったことはありませんか。答えは、施術そのものの価値よりも「その患者さんをどこで見つけたか」にあります。自由診療は保険が使えないぶん、患者さんは複数のクリニックの価格を比べてから選びます。広告費をかけて検索や広告に載せても、実際に来院につながるのはそのうちの一部です。予約するかどうかを決める最後の瞬間まで残るのはたいてい価格で、初回価格はその一瞬の比較で選ばれるために磨かれた数字だと言えます。検索結果やSNS広告でまず目に入るのも、たいていいちばん小さい数字であり、初回価格はその競争の中で選ばれるために置かれています。
だからこそ、初回価格だけを見て「この施術はこの値段」と覚えるのは早計です。通う前提なら、2回目以降にかかる通常価格までを合わせた、通う総額で比べる必要があります。初回価格と通常価格の差が大きいクリニックほど、新規の集客に力を入れているとも読めますし、逆に通常価格を高めに保つことで初回の値引き分を吸収する設計をしているとも読めます。広告の入口だけで施術の値段を判断せず、その先の価格まで追いかける癖をつけておくと、価格の見え方に振り回されにくくなります。初回価格の安さだけを覚えて周囲に話すと、実際に通っている患者さんの負担感とはずれた相場観を広めてしまうこともあります。
広告のルールから見た、費用表示の線引き
美容クリニックの広告表示には、医療法にもとづく医療広告ガイドラインという線引きがあります。自由診療をウェブサイトなどで広告する場合、通常は書けない詳しい情報でも条件を満たせば載せてよいとする「限定解除要件(自由診療の広告で詳しい情報を載せてよいとされる条件)」があり、その条件の一つに「自由診療で通常必要となる治療の内容や費用について情報を提供すること」が含まれています。初回価格だけを大きく見せて、通常必要な回数や2回目以降の価格を書かないことは、この条件を十分に満たしていない状態にあたる可能性があります。「料金は状態により異なります」とだけ書いて金額の目安を示さないことも、同じく不十分な例として挙げられています。
もう一つ、広告のルールが注意しているのが「費用の強調」です。「通常価格◯円→割引価格◯円」という表示を前面に押し出したキャンペーンや、会員登録での割引券の配布、症例モニターとしての大幅な値引きなどは、価格の魅力を強く打ち出しすぎることで医療機関の品位を損なうおそれがある表現として位置づけられています。割引そのものが禁止されているわけではなく、費用を過度に強調せず、条件や期間とあわせて落ち着いた見せ方にすることが求められています。初回価格の見せ方ひとつにも、集客上の工夫と、守るべき線の両方があるということです。
現場での初回価格の伝え方
制度の話を、受付やカウンセリングの現場に持ち帰るとどうなるでしょうか。予約の電話で初回価格だけを伝え、来院してから通常価格を初めて知らせると、患者さんの側には「聞いていた話と違う」という印象が残ります。安さにひかれて来院した人ほど、後から出てくる価格情報には敏感です。予約の時点で、初回価格と2回目以降の価格をセットで伝えておくと、その後カウンセリングでの説明がずっとスムーズになります。逆に、聞かれるまで通常価格を伏せておく対応を重ねると、院そのものへの信頼が積み上がりにくくなります。金額そのものより、順番を後回しにされたという体験のほうが、患者さんの記憶には長く残ります。
リピート割についても同じことが言えます。来院間隔や回数といった条件を確かめないまま「次からはもっと安くなります」とだけ案内すると、条件を満たせなかった患者さんには「言われた値段と違う」という不満につながります。条件を先に確認し、満たせる場合だけ割引後の価格を口にする。満たせるかどうか分からない段階では、通常価格を基準に伝えておく。この順番を守るだけで、後からの説明のしにくさはかなり減ります。条件を伝える一言を惜しまないことが、結果としていちばん短い説明になります。担当が変わっても同じ順番で案内できるよう、条件の確認手順を院内で揃えておくと安心です。
広告価格を見る、3つのパターン
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① 初回だけ安い型
入口価格として初回を安く出す。2回目以降に通常価格がある前提で、通う総額を見る。
→ 料金ページで総額にたどり着く読み方 -
② 通常価格が見えない型
初回だけ載っていて通常価格が非公開。通う前提なら総額が読めないサインとして扱う。
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③ リピート割で初回より安い型
来店間隔や回数の条件を満たすと初回より下がる。自分がその条件を満たせるかを先に確認する。
現場で、この読み筋を当てる
予約時は初回価格だけを伝えていた
求人票 電話予約で「初回はこの価格です」とだけ案内。来院してカウンセリングで2回目以降の価格を提示すると、「そんな値段は聞いていない」と表情が変わった。
読み筋 初回価格は最初の印象を決めますが、通う前提の患者さんにとっての本当の関心は総額です。予約の時点で2回目以降の価格まで一緒に伝えておけば、来院後の説明は「確認」で済みます。後出しにすると、同じ情報でも「隠していた」という印象に変わってしまいます。
リピート割の条件を満たせなかった患者さん
求人票 「リピートなら初回より安くなります」と案内していたが、来院間隔が空いてしまい、条件から外れて通常価格になった。患者さんは「話が違う」と困惑した。
読み筋 リピート割は、来店間隔や回数といった条件つきの価格です。条件を確認する前に安い価格だけを伝えると、条件から外れたときの落差がそのまま不満になります。条件を満たせるか分からない段階では、通常価格を基準に伝え、割引は「満たせれば」の話として添えるくらいがちょうどよい伝え方です。
自院サイトの料金ページを見返してみたら
求人票 新人研修で自院の料金ページを見直すと、初回価格だけが大きく載っていて、通常必要な回数や2回目以降の価格がどこにも書かれていなかった。
読み筋 初回価格しか載っていないページは、患者さんから見て通う総額が読めないだけでなく、広告のルールが求める費用情報の示し方としても不十分にあたる可能性があります。気づいても自分の判断で書き換えようとせず、広告物を管理している担当者に共有するのが現場でできる対応です。
やりがちな誤読
NG 初回価格だけを案内し、2回目以降の価格は聞かれたときにだけ答える。
読み直す 予約の時点で、初回価格と2回目以降の価格をセットで伝える。総額のイメージを最初に共有しておく。
安さにひかれて来院した患者さんほど、後から知らされる価格情報に敏感です。
NG 条件を確認しないまま「リピートならもっと安くなります」とだけ案内する。
読み直す 来院間隔や回数といった条件を先に確認し、満たせる場合だけ割引後の価格を伝える。満たせるか分からない段階では通常価格を基準に話す。
条件つきの価格を無条件のように伝えると、後で「値段が上がった」と感じさせてしまいます。
NG 自院の料金ページに初回価格だけを大きく載せ、通常必要な回数や2回目以降の価格を書かない。
読み直す 初回価格と並べて、通常必要な回数の目安と2回目以降の価格帯も載せる。
自由診療の広告では、通常必要となる治療内容や費用についての情報提供が求められています。
YOUR VIEW
あなたの立場で読む
美容クリニックの売上導線を理解する基礎。広告価格と通院継続の価格が別物だと分かる。
患者に安さを説明するときは、初回条件、次回価格、期限、対象範囲を一緒に案内する。
同じ施術を扱う2院の広告価格を並べ、初回・通常・2回目以降が公開されているかを各院◯×で記録する。通う前提の総額が読めるのはどちらか言えるようにする。