読み方ガイド 08

美容医療の解約とクーリングオフ
「やめたい」と思ったら読む順番

カウンセリングの流れで契約したけれど、家に帰って冷静になったらやめたい——。そうなったとき、法律が味方になるかどうかは「どの契約か」と「今日が何日目か」で決まります。慌てて電話する前に、確認する順番をまとめました。

読み方ガイド 08 美容医療ラボ編集部 初出 2026.06

§1 まず「特商法の対象か」を3条件で判定する

美容医療は2017年12月1日から、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に指定されています。ただし、すべての契約が対象になるわけではありません。保護が受けられるのは、次の3条件をすべて満たす契約だけです。

3つ全部YESで初めて、クーリングオフと中途解約の法的保護が使える。

指定施術は、脱毛(光・針)、にきび・しみ・ほくろ等の除去や皮膚の活性化(光・音波・薬剤・機器)、しわ・たるみ軽減(薬剤・糸)、脂肪の減少(光・音波・薬剤・機器)、歯の漂白の5種類です。コース契約の医療脱毛や、複数回セットの照射治療が典型的な対象です。

FIG. 01 — 特商法の対象か? 3条件の判定フロー

条件①
期間が1ヶ月超
契約期間が1ヶ月を超えている
YES 次へ NO 対象外
条件②
総額が5万円超
契約総額が5万円を超えている
YES 次へ NO 対象外
条件③
指定施術である
脱毛・しみ除去・しわ軽減・脂肪減少・歯の漂白など
YES 特商法の対象 NO 対象外
特商法の対象(2017年12月1日〜)。対象外でも消費者契約法・約款・消費生活センターの活用余地あり。
図1特商法「特定継続的役務提供」の対象判定フロー

§2 8日以内ならクーリングオフ — 全額返金・理由不要

対象契約なら、契約書面を受け取った日を1日目として8日間は、理由を言わずに契約を解除できます。施術をすでに受けていても、支払ったお金は全額返ってきます。

通知は書面か電磁的記録で。電話は無効。

メールやクリニックの問い合わせフォームからの通知も「電磁的記録」として認められます。効力は発信した時点で発生するので、送信画面のスクリーンショットを必ず残してください。そして見落とされがちなのがこの点です——契約書面に不備があれば、8日間のカウントはそもそも始まっていません。8日を過ぎていても行使できる場合があります。

FIG. 02 — クーリングオフの8日ルール(時間軸)

契約書面
受領日(1日目)
クーリングオフ期間(8日間)
期間終了
1日3日5日8日9日目→
全額返金・理由不要・施術済みでも可
通知方法: 書面 or メール・フォーム(電磁的記録)
電話による通知は無効
書面に不備があれば8日後も行使可
図2クーリングオフの8日ルールと通知方法

§3 9日目からは「中途解約」— 法定上限を超える請求は無効

8日を過ぎても、あきらめる必要はありません。特商法の対象契約は、契約期間中いつでも「これから先」を解約できます。解約料はかかりえますが、法律が上限を決めています。

法定上限を超える解約料は、約款に書いてあっても無効。

FIG. 03 — 中途解約の解約料・法定上限

タイミング
法定上限(特商法)
施術開始前
2万円
施術開始後
提供済み分の対価 5万円 または 契約残額の20%
(いずれか低い額)
図3中途解約の解約料・法定上限(特定商取引法)

§4 返金計算の単価に注意 — コース単価 vs 都度払い価格

中途解約でいちばんもめるのが、「消化済みの回数分をいくらで数えるか」です。法の趣旨は契約時のコース単価で数えること。ところが「解約時は通常価格(都度払い価格)で精算する」という約款で返金を大きく減らす例が、消費者庁の事例集にも載っています。

コース単価と都度払い価格の差が、返金額の差になる。

なお、リゼクリニックのように解約時の計算式を公式サイトで開示している院もあります。契約前に「解約するときの計算方法」を聞いておくと、この問題はほぼ防げます。

FIG. 04 — 解約精算の計算例(コース単価 vs 都度払い価格)

前提 10万円・5回コース、2回消化済み、都度払い価格は1回3万円
コース単価で精算
(法の趣旨)
消化分 2万円 × 2回 = 4万円
解約手数料上限 残額8万円の20% = 1.6万円 < 5万円 → 1.6万円
控除計 5.6万円
返金額 4.4万円
都度払い価格で精算
(不利な約款の例)
消化分 3万円 × 2回 = 6万円
解約手数料上限 残額4万円の20% = 0.8万円 < 5万円 → 0.8万円
控除計 6.8万円
返金額 3.2万円
同じ条件でも精算方式で1.2万円の差。精算単価の取り方が問題になった事例が消費者庁に報告されています。疑問がある場合は消費生活センター(188)へ。
図4解約精算の計算例 — 単価の取り方で返金額が変わる

§5 特商法の対象外のとき

1回きりの施術、総額5万円以下、期間1ヶ月以内。これらは特商法の保護の外側です。ただ、対象外だからといって泣き寝入りが決まるわけではありません。

消費者契約法(不当な勧誘の取消し)や約款の内容しだいで、返金を求められる場合があります。2024年には、鼻の手術の「当日キャンセル料100%」請求が消費生活センターの介入で全額取り下げになった事例も報告されています。

特商法の外でも、諦める前に188に電話する。

§6 困ったら188 — 消費生活センターへの連絡手順

消費者ホットライン188(いやや)に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります。相談は無料です。医療ローンで払っている場合は、クリニックへの解約通知と同時に信販会社への連絡も必要です(手順は医療ローンガイドで)。

01

「この契約は特定商取引法の特定継続的役務提供の対象ですか?」

— 契約前に確認する。期間・金額・施術の種類の3条件を満たすかどうか

02

「契約書面には法定記載事項がすべて記載されていますか?」

— 書面不備があれば8日を過ぎてもクーリングオフが可能。書面を必ず保管する

03

「解約した場合の計算方法を教えてください(消化分の単価と解約手数料の根拠)」

— コース単価か都度払い価格かで返金額が変わる。書面で確認する

04

「医療ローンで支払っている場合、解約の連絡先は信販会社にも必要ですか?」

— 施術契約とローン契約は別。両方に書面で連絡する必要がある

05

「今日の契約書面を持ち帰っていいですか?(コピーをもらえますか?)」

— クーリングオフ・解約時に書面が必要。必ず控えを保管する

06

「今日契約しなくても、後日申し込めますか?」

— 持ち帰りを断る、「今日だけの特別価格」を提示するのは消費者相談の典型パターン

よくある質問

クーリングオフは何日以内に連絡すればいいですか?

契約書面を受け取った日を1日目として8日間以内です。書面に不備がある場合はこの期間を過ぎても行使できます。通知は書面またはメール・フォームなどの電磁的記録で行い、発信した時点で効力が発生します。電話は証拠が残らないため認められません。

施術を1回受けてしまった後でもクーリングオフできますか?

契約書面受領から8日以内であれば、施術済みであっても全額返金を請求できます。身体の原状回復は物理的に不可能ですが、金銭的には全額返還されます(特定商取引法の対象である場合)。

中途解約すると違約金はいくらかかりますか?

特定商取引法の対象であれば、法定の上限額を超える解約料を請求することはできません。施術開始前なら2万円、開始後なら「提供済み分の対価」+「5万円か契約残額の20%のいずれか低い額」が上限です。これを超える請求は無効です。

1回きりの施術でクーリングオフはできますか?

特定商取引法の「特定継続的役務提供」の対象は「期間1ヶ月超かつ総額5万円超」の継続的な役務です。1回きりの施術はこの対象外となります。ただし消費者契約法や約款の内容によって別途保護される可能性があります。消費生活センター(188)にご相談ください。

医療ローンで支払っている場合、解約の手続きはどうなりますか?

クリニックへの解約通知と同時に、信販会社にも書面で連絡する必要があります。施術契約とローン契約は別の契約のため、クリニックに解約を伝えるだけではローン残高は消えません。割賦販売法30条の4の「支払停止の抗弁」を使う場合も書面での通知が必要です。

契約書面に不備があると言われましたが、どう確認しますか?

法定記載事項(役務の内容・期間・対価・解除に関する事項・クーリングオフに関する記載など)が欠けている、または記載が不鮮明な場合は書面不備となります。消費生活センター(188)またはクーリングオフ専門の弁護士・行政書士に書面を見せて確認するのが確実です。

本記事は2026年6月時点の法令に基づく一般的な情報の整理です。法律の適用は契約内容・施術内容により個別判断が必要であり、本記事は法律相談の代替ではありません。具体的なトラブルは消費生活センター(188)または弁護士にご相談ください。

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