医療ローンの「月々◯円」
総額と金利のほんとうの読み方
「月々9,800円〜」なら払えそう——そう思ったときが、いちばん危ないタイミングです。何回払いで、金利は何%で、総額はいくらになるのか。その答えは契約書面を見るまで出てきません。署名する前に知っておきたい仕組みを、実際の数字で整理しました。
§1 医療ローンは三者契約 — 貸すのはクリニックではない
医療ローンは、クリニックがお金を貸してくれる制度ではありません。オリコ・アプラス・ジャックスといった信販会社がクリニックに立替払いをして、あなたは信販会社に分割で返していく——という三者の取引です。つまりあなたは、クリニックとの「施術契約」と、信販会社との「ローン契約」、2つの契約を同時に結んでいます。
施術契約とローン契約は別物。
この「別物」が、あとで出てくる落とし穴ぜんぶの根っこです。施術をやめてもローンは自動では消えません。解約したのに返済だけ続く——という相談が実際に起きています。
FIG. 01 — 医療ローンの三者関係
§2 「月々◯円」を総額に直す
月々の数字は小さく見えます。でも「月々×回数」で掛け算すると、総額は元金を大きく超えることがあります。元金30万円で試算してみました。
金利が高いほど、回数が多いほど、総額は膨らむ。
美容医療の消費生活相談は2022年度の3,798件から2024年度には10,717件へ、2年で約2.8倍に増えています(国民生活センターPIO-NET)。支払い方法ではクレジット・ローンの分割払いに関する相談が目立ちます。月々の額ではなく総額で考える——それだけで、この種のすれ違いの多くは契約前に気づけます。
FIG. 02 — 元金30万円の総額試算(目安)
| 実質年率 | 回数 | 月々の目安 | 支払総額の目安 | 利息の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 15% | 12回 | 約27,077円 | 約324,930円 | 約24,930円 |
| 15% | 60回 | 約7,137円 | 約428,219円 | 約128,219円 |
| 8% | 60回 | 約6,083円 | 約364,975円 | 約64,975円 |
§3 年率は契約書を見るまで分からない
信販系の医療ローンの実質年率は4〜14%程度が相場とされます。ただ、大手クリニックの公式サイトを当ラボが確認した範囲では、年率を明示している院はほとんどありませんでした。「月々◯円〜」と「3〜84回」は書いてあっても、肝心の年率は書いていない。自分の契約が何%になるかは、申込書面ではじめて確定します。
「審査を通すために年収を多めに書いて」は違法行為。
国民生活センターには、クリニック側からこうした案内をされたという相談が実際に報告されています。書かされるのは、あなたの名義の契約書です。応じてはいけません。
FIG. 03 — 年率確認の手順
§4 審査で見られるもの
審査で見られるのは、年収・勤続年数・信用情報(過去の延滞など)・他社借入の合計といった項目です。18歳以上で安定した収入があれば、学生でも申し込める場合があるとされます。可否を決めるのはクリニックではなく信販会社です。
落ちた理由は開示されないことがほとんどです。なお、短期間に何社も申し込むとその記録自体が信用情報に残り、次の審査に影響することがあります。
§5 解約してもローンは消えない — 支払停止の抗弁
施術に問題が起きた、あるいは解約したい。そのときローンの残りはどうなるのか——ここで知っておきたいのが、割賦販売法30条の4の「支払停止の抗弁」です。次の3条件をすべて満たすと、信販会社への支払いを書面(抗弁書)で止められます。
抗弁権は「支払いを止める権利」であり、返金請求権ではない。
すでに払った分の返金は、この制度では戻ってきません。クリニックへの解約・返金の交渉と、信販会社への通知。この2つを並行して進める必要があります。
FIG. 04 — 割賦販売法30条の4「支払停止の抗弁」の3条件
§6 契約前チェックリスト
署名する前に、ここから下を書面で確認してください。口頭の説明は、あとから証明できません。
「実質年率は何%ですか?」
— 申込書面の「実質年率」欄を自分で確認する。口頭で「低い」と言われても書面の数字が正式
「支払総額(元金+利息の合計)はいくらですか?」
— 月々の金額×回数で自分で計算するか、書面の「支払総額」欄を確認する
「繰上返済・一括返済はできますか?手数料はかかりますか?」
— 一括返済のみ可・手数料ありの場合が多い。契約書の条件を確認する
「施術を解約した場合、ローンはどうなりますか?」
— 施術契約とローン契約は別。解約時の手続き先(クリニック+信販会社)を事前に確認する
「信販会社名と問い合わせ先を教えてください」
— 後日トラブルが起きたとき、信販会社への直接連絡が必要になる
「今日署名しなくても、後日申し込めますか?」
— 「今日だけの特別条件」を提示して即日署名を迫る手口は消費者相談の典型パターン
よくある質問
医療ローンの金利はどのくらいですか?
信販会社の実質年率は4〜14%程度が相場とされますが、契約書面に記載されるまで正確な数字は分かりません。大手クリニックの公式サイトでは年率を非公示にしているケースが多く、申込書面で必ず確認する必要があります。
審査が通れば学生でも申し込めますか?
18歳以上で安定した収入があれば学生でも申し込めるケースがあります。ただし年収・勤続年数・他社借入の状況が審査に影響します。「審査を通すために年収を多めに書いて」と案内された場合は応じてはいけません。これは違法行為であり、国民生活センターにも報告事例があります。
施術をキャンセルしたらローンも消えますか?
施術契約とローン契約は別の契約です。施術を解約してもローンは自動では消えません。割賦販売法30条の4の「支払停止の抗弁」を使うには、①2ヶ月以上かつ3回以上の分割、②支払総額4万円以上、③クリニックへの抗弁事由あり——の3条件を満たす必要があり、信販会社へ書面で通知します。
繰上返済はできますか?手数料はかかりますか?
繰上返済は「全額一括のみ可」としている信販会社が多く、一部繰上は契約によっては認められません。手数料の有無・金額も契約書面に記載されていますので、契約前に確認してください。
消費生活センターに相談するにはどうすればいいですか?
電話番号188(いやや)に電話すると、最寄りの消費生活センターに繋がります。ローン・解約・クーリングオフなどのトラブル全般について相談できます。費用はかかりません。
医療ローンと現金払い・クレジット払いの違いは何ですか?
医療ローンは信販会社がクリニックに立替払いをする三者間取引です。クレジットカード払いも割賦販売法の対象になりますが、医療ローン(個別信用購入あっせん)は特定のクリニックとの契約と紐づいており、解約時の手続きが異なります。クレジット一括払いは金利がかかりません。いずれも契約書面で条件を確認してください。
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