先に読むと理解が早い
FIG.01 — 面接で聞く4カテゴリを質問文に変える
面接で聞くべきは、数字よりも仕組み
面接で本当に確かめたいのは、給与や研修といった条件そのものなのでしょうか。それとも、その条件がなぜそう決まっているのかという仕組みのほうなのでしょうか。多くの候補者は「歩合は何%ですか」「研修はありますか」という条件だけを聞いて終わります。ですが数字は院の業績や時期によって変わっても、支給の対象や算定の基準、研修の進め方といった仕組みは簡単には変わりません。限られた面接の時間で優先して確かめるべきは、変わりやすい数字よりも、変わりにくい仕組みのほうです。仕組みが分かれば、数字が変わっても自分で読み替えられるようになります。
面接は、院が候補者を選ぶ場であると同時に、候補者が院を選ぶ場でもあります。ただし実際には、院側が先に良い条件を提示し、都合の悪い条件は聞かれるまで語られない、という非対称が起きやすい場でもあります。悪気があるとは限りません。担当者自身が現場の細部までは把握していないこともありますし、面接という短い時間の中で、すべてを自分から説明しきるのは院側にとっても簡単ではありません。だからこそ聞く側は、当日の思いつきではなく、事前に質問文を用意しておく必要があります。何を、どの順で聞くかを決めておくと、緊張していても抜け漏れなく確認できますし、答えの曖昧さそのものが判断材料になります。
求人票と面接、法律が届く範囲・届かない範囲
求人票や募集の際に明示すべき労働条件の一部は、職業安定法で項目が決められています。業務の内容、契約期間、就業の場所、賃金、労働時間といった基本項目がこれにあたります。ただし、研修を何日間かけてどう進めるか、SNS運用をどこまで担当させるか、個人目標をどう設定するかといった運用の細部までは、法律が一つひとつ指定しているわけではありません。求人票に書かれていない部分があるのは、隠しているというより、法律の対象外だからということも少なくありません。だからこそ、この範囲は自分から質問して埋める必要があります。
雇用契約を結ぶ際には、労働基準法第15条により、使用者は労働条件を明示する義務を負います。国は2024年4月にも、募集時などに明示すべき労働条件の項目を追加する形でルールを見直しました。ただし、面接での口頭の説明は、この明示義務を果たしたことにはなりません。あとで「言った・言わない」になりやすいのは、口頭のやり取りだからです。面接で得た回答は、労働条件通知書(雇用条件を書面で伝える文書)や雇用契約書、就業規則といった書面と照らし合わせて初めて、確認が完了したと言えます。面接はゴールではなく、書面確認の前段階だと考えておくと安全です。
答えの質は、聞き方で変わる
面接という場では、候補者のほうが緊張し、院の担当者のほうが場慣れしている、という力の差が生まれやすいものです。担当者は日常的に採用の説明をしていますが、候補者にとっては数ヶ月に一度あるかないかの機会です。この差があるまま口頭だけで進めると、聞きたかったことの半分も聞けずに終わることがあります。だから、聞きたい項目をあらかじめ紙に書き出しておきます。紙に書いてあれば、話の流れに押し流されても、最後に確認すれば済みます。緊張への対策は、記憶力を上げることではなく、記憶に頼らない仕組みを作ることです。
同じ内容を聞くにも、聞き方によって返ってくる答えの具体性は変わります。「研修はありますか」と聞けば「もちろんあります」としか返らないことがありますが、「研修は何日間で、誰が担当し、独り立ちの基準は何ですか」と聞けば、答えられる院と答えに詰まる院がはっきり分かれます。数字や固有名詞で答えられる質問は、その場しのぎの説明では答えられないからです。歩合や評価、業務範囲についても同じで、抽象的な質問には抽象的な答えしか返らないと考えておくと、質問文を作るときの基準になります。この基準は、面接の場だけでなく、入職後に評価面談で確認事項を聞くときにもそのまま使えます。
面接で確認する、4つの問い
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① お金の条件
給与・歩合の対象、支給タイミング、未達時の扱いを質問文にしておく。
→ 歩合・インセンティブの仕組み -
② 育つ環境
研修の中身と期間、配属の決まり方。「その都度覚えてもらう」と返れば体系的な研修は無いと読む。
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③ 現場の圧
個人ノルマ・チーム目標・売上目標と、評価面談の有無。
→ ノルマ・目標数字との付き合い方 -
④ 業務範囲
SNS運用・物販・クレーム対応が、どこまで自分の仕事になるか。
現場で、この読み筋を当てる
研修の話が「見て覚えて」で終わったとき
求人票 研修について聞いたら、「うちは体育会系だから、マニュアルとかはなくて、先輩の接客を見て覚えるスタイルです」と笑顔で返ってきた。
読み筋 「見て覚える」こと自体が悪いわけではありません。ただ、独り立ちの基準や、分からないときに聞ける担当者が決まっているかを重ねて聞くと、仕組みとして回っているのか、ただ整備されていないだけなのかが分かれます。「見て覚える」の後ろに、確認できる仕組みがあるかどうかを見ます。
SNS運用の範囲が、入ってから広がった
求人票 面接で「SNSは最初は先輩の投稿を手伝う程度です」と説明を受けて入職。3ヶ月後には、個人アカウントでの発信頻度を毎週報告する担当になっていた。
読み筋 「手伝う程度」のような言葉は、頻度も範囲も確定していません。入職前に聞くなら、「週に何回、誰の名前で、何を発信するか」まで数字と主語を入れて聞きます。曖昧な言葉のまま合意すると、後から範囲が広がっても「合意した」ことにされやすくなります。
面接で聞いた回答と、契約書の内容が違った
求人票 面接で「歩合は入社月から付きます」と聞いていたが、届いた労働条件通知書には「試用期間3ヶ月は歩合対象外」と書かれていた。
読み筋 面接の口頭回答と書面が食い違うとき、効力を持つのは書面のほうです。この差に気づけたのは、面接で聞いた内容をメモしていたからです。口頭の回答は、書面が届くまでの仮の情報として扱い、届いたら必ず一つずつ照らし合わせます。
やりがちな誤読
NG 当日、その場で思いついた質問だけをする。緊張も重なり、給与の話だけ聞いて面接が終わってしまう。
読み直す 面接前に、給与・歩合・研修・配属・残業・SNS業務・売上目標・クレーム対応の8項目を紙に書き出しておく。当日はその紙を見ながら、聞き漏らしを防ぐ。
記憶力に頼らず、書いた紙に頼る。それだけで、当日聞ける項目数がはっきり変わります。
NG 「歩合はいつから付きますか」など、答えにくそうな質問を遠慮して聞かない。
読み直す 答えにくそうな質問こそ、数字を主語にして聞く。「歩合は入社何ヶ月目から対象になりますか」のように、答えが数字や期間になる聞き方をする。
遠慮して聞かなかった項目ほど、入職後に「思っていたのと違う」と感じやすい項目です。
NG 面接での口頭回答を、そのまま最終的な労働条件として信じて、契約書を読まずにサインする。
読み直す 面接で聞いた回答をメモしておき、労働条件通知書や雇用契約書が届いたら、同じ内容になっているか一つずつ照らし合わせる。
面接の回答と書面が違ったときに効力を持つのは書面のほうです。照らし合わせは、疑うためではなく確認のためです。
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あなたの立場で読む
面接で緊張して肝心な条件を聞けなかったは入職後の後悔の定番。事前に研修・評価・配属・残業・SNS業務の5項目を質問文にしておく。
転職検討中の現役スタッフは、今の不満(例:ノルマが辛い→個人目標の有無と未達時の扱いを聞く)を質問文に変換して次の院で確認する。
8項目(給与・歩合・研修・配属・残業・SNS・売上目標・クレーム対応)を質問文にしてA4一枚にまとめる。「その都度覚えてもらう」と返ってきたときの読み筋を1行添える。