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レーザー治療の基本(種類と選び分け)

「レーザーだから効く」で選ぶと外れる。同じ光でも波長が違えば狙う標的(メラニン・血管・水分)がまるで別物になり、肝斑(かんぱん)は強く当てるほど濃くなることさえある。

レーザー治療の基本(種類と選び分け)のイメージイラスト
患者として相場を見る(ねだんの目利き) シミ・レーザーの値段と選び方 実際の相場と、契約前に確認することへ。

先に読むと理解が早い

「レーザー=シミに効く」は半分だけ正しい。波長で狙える標的が変わるため、悩みの種類を見ずに機器を選ぶと悪化する場合がある。肝斑への高出力照射と、急変・急成長した色素病変は必ず医師が判断する。

FIG.01 — 種類でわかれる標的と悩み

種類 → 標的 Qスイッチ・ピコ メラニン色素 シミ・アザ・刺青 色素レーザー ヘモグロビン(血管) フラクショナル 皮膚組織(微細損傷) 凹みニキビ跡・肌質 炭酸ガス 水分(組織蒸発) ほくろ・イボ・除去 適応と禁忌の最終判断は医師へ。肝斑疑いは高出力照射前に必ず確認
図1種類・モードで標的(働く層)が変わる。どの悩みに効くかは図2へ。

FIG.02 — どの悩みにどれが効くか

種類 → 第一手 シミ・そばかす ピコ・Qスイッチ系 赤み・血管拡張 色素レーザー 凹みニキビ跡 フラクショナル ほくろ・イボ 炭酸ガスレーザー 悪性鑑別は必ず先に 取り違え注意:肝斑に高出力メラニン照射は悪化リスクあり。急成長・にじみは悪性確認を先に
図2どの悩みにどれが効くか

4種類の機器、それぞれの正体

Qスイッチ・ピコ系レーザーは、メラニン(メラニンを作る細胞が過剰反応して色素が溜まったもの)に特異的に吸収される波長を使う。光のエネルギーが色素の粒を砕き、体内のマクロファージ(掃除役の細胞)が片付ける仕組み。シミ・そばかす・太田母斑(タイプのアザ)・刺青の除去が主な出番で、ピコ秒(1兆分の1秒)という極めて短いパルスで照射するピコ系はとくに粒を細かく砕くため、周囲の熱ダメージを抑えやすいとされる。ただしメラニン標的であることは変わらないため、肝斑のように刺激で色素が増えるタイプには向かない。

色素レーザー(代表的な波長でいえば赤い色に吸収されやすい光)は、ヘモグロビン(血液の赤い色素)を標的にする。毛細血管を選択的に加熱・凝固させるため、赤ら顔・毛細血管拡張・赤みのある傷あと・血管腫に用いられる。「シミには効かないのに、なぜ美容クリニックに置いてあるのか」と患者に聞かれた場合、「血管の赤みに特化した道具です」と説明できると理解が早い。フラクショナルレーザーは、皮膚に格子状の微細な穴(マイクロカラム)を開けることで、自己修復を促して肌の入れ替えを起こす仕組みだ。凹みニキビ跡・毛穴・肌質改善・ちりめんじわに使われる。アブレイティブ(削る)タイプはダウンタイムが数日から1週間以上になる場合があり、非アブレイティブ(削らない)タイプはダウンタイムが短い代わりに一度で出る変化も小さい。どちらを選ぶかは、患者のライフスタイルと医師の判断の組み合わせで決まる。炭酸ガスレーザーは水分に吸収されやすい波長で、組織を蒸発させる。ほくろ・イボ・脂漏性角化症(いぼ状の老人性のシミ)など、「物理的に削り取る」必要がある場合の選択肢になる。

FIG.03 — 4種類の機器の仕組み

4種類の機器を仕組みで比べる 種類 仕組み(体の中でしていること) Qスイッチ・ピコ 光のエネルギーで色素の粒を砕く 色素レーザー 毛細血管を加熱して固める フラクショナル 格子状に穴をあけ、自己修復を促す 炭酸ガス 熱で表面を削り取る 同じレーザーでも仕組みが違うから、効く悩みも一つに絞られる
図3同じ「レーザー」でも、体の中でしていることはこれだけ違う。標的・悩みとの対応は図1・図2へ。

光の波長がちがえば、狙える相手も変わる

光には波長(光の振動の長さ)があり、色を分けるのと同じ原理で「吸収されやすい物質」が変わる。メラニンは短い波長、ヘモグロビンは中間の波長、水分は長い波長をそれぞれよく吸収するため、狙いたい物質だけが反応し周囲の組織が傷みにくい波長を選んで機種が分かれる仕組みだ(下図)。

同じメラニン標的でも、皮膚の浅いところにある表在性のシミと、真皮層にあるアザでは深達度が違うため波長や出力の調整は変わる。「機種が同じならどのシミにも効く」わけではない。ダウンタイムの長さも標的や反応の大きさで変わるため、どちらが良い・悪いではなく、患者の生活スケジュールと期待する変化の大きさの組み合わせで医師が選ぶものと伝えると、患者の期待値調整がしやすい。

FIG.04 — 波長で決まる「狙える相手」

波長の長さ(短い→長い) 短い波長(青〜緑) 中間の波長(黄〜赤) 長い波長(赤外線) メラニン(色素) ヘモグロビン(血管) 水分(組織) 同じ物質が標的でも、浅い層か深い層かで波長・出力の選び方は変わる
図4波長帯で吸収される物質が変わる。これが機種の使い分け(図1・図2)の物理的な根拠になる。

肝斑・PIH・悪性のおそれ、見分けて渡す3つ

肝斑・PIH(炎症後の色素沈着)・悪性のおそれのある病変は、見た目が似ていても原因・サイン・スタッフの動きがそれぞれ違う(下図)。スタッフの役目はどれかを診断することではなく、原因や見た目のサインに気づいて、レーザーを当てる前に医師へ先に渡すことにある。

肝斑はほかのシミと合併していることが多く、強いレーザーや過剰な刺激でかえって濃くなるため、治療の第一手は内服・外用と「こすらない」生活指導から入ることが多い。PIHは肌色が濃い(フィッツパトリック分類(肌色の明るさを6段階で分けるものさし)で濃いほう)人や、熱に敏感な肌ほどリスクが上がるため、出力設定と事前説明が慎重になる。悪性のおそれのある病変は美容クリニックでも実際に遭遇しうるため、「シミみたいなものですが、急に大きくなってきた」と患者が言ったら軽く流さず、レーザーの話を進める前に医師への確認を必ず一枚かませる。これは診断ではなく、止まって渡すというスタッフの動きにすぎない。

FIG.05 — 見分けて渡す3つ

見分けて渡す3つ(サイン→動き) 肝斑 PIH 悪性疑い 左右対称・もやっと広がる 熱・傷のあと茶色く残る 急拡大・いびつ・出血がある 気づいたら医師に先に伝える 日焼け・摩擦を避けると伝える レーザー前に医師へ確認を 共通点:気づいたら止めて、医師に確認をはさむこと
図53つとも診断はスタッフの仕事ではない。見た目のサインに気づいて、医師に渡すところまでが役割。
レーザー治療の基本(種類と選び分け)の場面イラスト

レーザーは標的の違いから逆算して読む

  1. ① 光の色ではなく「何に吸収されるか」で機種を分ける

    レーザーの光は、波長(色の違いのようなもの)によってどの色素・組織に吸収されるかが決まる仕組みだ。メラニン(黒・茶の色素)を狙うもの、ヘモグロビン(血管の赤み)を狙うもの、水分(組織ごと蒸発させる)を狙うものは、それぞれ別の機器になる。機種名を先に覚えるより、この三つの標的のちがいを軸に考えるほうが早い。

  2. ② 標的×代表的な悩みで4系統を引き出せるようにする

    レーザーの機種は、標的と代表的な悩みのペアで覚えると迷わない。Qスイッチ・ピコ系はメラニン標的でシミ・アザ・刺青に、色素レーザーは血管標的で赤ら顔・毛細血管に、フラクショナルレーザーは皮膚の奥に微細な穴を開けて凹み・肌質改善に、炭酸ガスレーザーは水分標的で蒸発させてほくろ・イボ除去に使う。この四つのペアを即答できると、患者から機種名を聞かれても慌てない。

  3. ③ 削るか削らないかでダウンタイムの説明が変わる

    皮膚を削る・蒸発させる照射は、アブレイティブ(ablative)と呼ばれる。炭酸ガスレーザーや一部のフラクショナルがここに入り、ダウンタイム(施術後の赤みや皮むけ)が長くなりやすい。削らずに色素や血管だけに作用するものは非アブレイティブで、ダウンタイムは短い。「削るか削らないか」を軸に説明すると、患者にもダウンタイムの長さが伝わりやすくなる。

  4. ④ 高出力が裏目に出る場面と、渡すべき境界を知る

    最大の落とし穴は肝斑(かんぱん)だ。顔に左右対称にもやっと広がるタイプのシミで、高出力のレーザーを当てるとかえって色素細胞が刺激されて濃くなることがある。もうひとつの注意点が炎症後の色素沈着で、治療後にレーザー焼け(PIH)が出る場合がある。加えて、急に大きくなった・形がいびつ・表面がでこぼこ・出血するといった色素病変は、悪性の可能性もあるためレーザー治療の前に皮膚科的な確認がいる。肝斑かどうかの見極め、禁忌の確認(妊娠・光過敏症・金の糸など埋め込み物・ケロイド体質)、施術前の肌色・肌質確認(フィッツパトリック皮膚タイプ)は、いずれも医師が判断する領域だ。スタッフに求められるのは、「その可能性があるかもしれない」と気づいて渡すところまでとなる。

    → カウンセラーと医師の役割の違い

YOUR VIEW

あなたの立場で読む

カウンセリングで患者から「レーザーでシミを取りたい」と言われたとき、「シミの種類によって使う機器が変わる」「今日、医師に見てもらって種類を確認します」と一言添えると、治療の流れが自然に医師判断へつながる。機器の種類を説明できると、比較検討している患者の疑問にも落ち着いて対応できる。

次の一歩 レーザー相談でまず確認することは二つある。「どんな種類の悩みか」と「肝斑タイプの可能性はあるか」だ。この二点さえ押さえておけば、種類の見立てを医師への橋渡しとして言葉にできる。
演習

「左右の頬にもやっと広がる茶色いくすみが気になる」という相談を受けたと想定してみよう。まず、肝斑を疑う根拠を3つ声に出せるか試す。左右対称であること、ホルモンの影響を受けやすいこと、摩擦の習慣があることの3つだ。言えたら、その場でレーザー機器を勧めない理由を1行で言い切り、医師へ渡す一言まで声に出して練習する。

章末クイズ

読み終えた目で、現場の場面を8問。ぜんぶ答えると結果が出ます。

  1. Q1

    患者から「レーザーでシミを取りたい」と相談された。カウンセラーとしてまず取るべき対応はどれか。

  2. Q2

    「頬骨のあたりに左右対称にもやっと茶色いくすみが広がり、生理周期で濃さが変わる」という相談を受けた。まず疑うべきタイプはどれか。

  3. Q3

    「赤ら顔・毛細血管の赤みが気になる」という相談を受けた場合、標的と機器の組み合わせとして正しいのはどれか。

  4. Q4

    図の観察メモにあるこのケース。まず疑うべきタイプはどれか。

    FIG.Q — このケースを見立てる

    カウンセリング時点の観察メモ 部位 両頬・頬骨のあたり 左右差 左右対称に広がっている 輪郭 もやっとにじむように広がる(くっきりではない) 経過 数か月前からあり、生理周期で色の濃さが変わる 生活背景 洗顔やマッサージでこする習慣がある
  5. Q5

    同じ図のケースについて、スタッフが取るべき最初の一手として適切なのはどれか。

  6. Q6

    「ダウンタイムをできるだけ短くしたい」という患者の希望を踏まえると、検討する流れになりやすいのはどちらのタイプの照射か。

  7. Q7

    「シミみたいなものだが、最近急に大きくなってきて、表面もでこぼこしている」と患者から相談された。スタッフの対応として適切なのはどれか。

  8. Q8

    患者に「シミには効かないのに、なぜこのクリニックに色素レーザーが置いてあるのですか」と聞かれた。本文の考え方に沿った説明はどれか。

確認するキーワード

Qスイッチレーザーピコレーザー色素レーザーフラクショナル炭酸ガスレーザー肝斑悪化
使うときの線引き: 「このレーザーで必ず取れます」「◯回で消えます」と言い切ってしまうと、あとで説明と食い違ったときにトラブルの種になる。適応・禁忌・悪性鑑別・出力設定を決めるのは医師で、スタッフの役割は種類と特徴を説明し、患者の状態を医師につなぐところまでだ。

根拠

次に読む

このページの扱い: 働く人向けの学習用の整理です。特定のクリニック・施術・求人を推奨するものではありません。医療判断は医師、個別の法的判断は専門家に確認してください。

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