読み方ガイド 31

その施術、医療費控除の対象になる?

確定申告の時期になると、「美容医療も医療費控除できるらしい」という話を耳にします。 答えは一律ではありません。国税庁が公開している一次情報にもとづき、 控除の仕組みと、対象になる場合・ならない場合の分かれ目を整理しました。

先に結論: 見た目を整えること自体が目的の美容医療(美容目的)は、原則として医療費控除の対象になりません。 外傷や病気の治療・機能障害の改善が目的の施術は、美容クリニックで受けたものでも対象になり得ます。 本記事は税務相談ではありません。個別の判断は税務署・税理士に確認してください。
美容医療と医療費控除・領収書ガイドのイメージイラスト
読み方ガイド 31 美容医療ラボ編集部 初出 2026.07 最終更新 — 2026-07-10

01医療費控除の基本の計算式

医療費控除は、1年間(1月1日〜12月31日)に自分または生計を一にする配偶者・親族のために支払った医療費が 一定額を超えたとき、所得から差し引ける制度です。国税庁のタックスアンサーNo.1120では、次の式で計算するとされています。

控除額 = 実際に支払った医療費の合計額 − 保険金などで補填された金額 − 10万円

その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」を差し引きます。 控除額の上限は200万円です。根拠法令は所得税法73条・120条、租税特別措置法41条の17です。

FIG. 01 — 医療費控除の計算式

控除額 = 支払った医療費 − 保険金など − 10万円 支払った 医療費の合計 保険金などの 補填額 10万円 (所得200万未満は5%) 控除額(上限200万円)が所得から差し引かれる ※ 国税庁タックスアンサーNo.1120にもとづく。生計を一にする配偶者・親族の分は合算できる。
図1医療費控除の計算式(国税庁タックスアンサーNo.1120)

02「美容目的」と「治療目的」の分かれ目

医療費控除の対象になるのは「医師または歯科医師による診療または治療の対価」です(国税庁タックスアンサーNo.1122)。 ここで実務上の判定基準になるのが、「美容目的か、治療目的か」という区分です。

国税庁が公開している法令解釈の質疑応答事例「歯列を矯正するための費用」では、 「容姿を美化し、又は容ぼうを変えるための費用」は医療費控除の対象とならないという考え方が示されています。 一方で、発育段階の子どもの成長を妨げないための矯正や、咀嚼機能・発音の改善など、 年齢や目的からみて社会通念上必要と認められる場合は対象になるとされています。 これは歯列矯正についての事例ですが、「美容目的か治療目的か」という判定の考え方は、 美容医療の税務上の扱いを説明する際にもたびたび参照されます。

この考え方を踏まえると、美容医療の費用は次のように整理できます。ただし、実際の判定は施術の内容・診断名・ 医師の説明によって変わるため、下記は一般的な傾向の整理であり、個別のケースを保証するものではありません。

FIG. 02 — 美容目的と治療目的の傾向整理

美容目的 見た目を整えること自体が目的 例)審美目的のみのしわ取り・ 輪郭形成・美白目的の施術 対象外になりやすい 治療目的 病気・外傷・機能障害の改善が目的 例)外傷後の再建・皮膚疾患の治療・ 機能障害を伴う症状の改善 対象になり得る 個別の施術がどちらに当たるかは、税務署・税理士に確認する
図2美容目的と治療目的の傾向整理(一般的な傾向であり、個別判断は税務署へ)

03領収書でもらうべき項目

医療費控除の申告には「医療費控除の明細書」の作成が必要で、その元になるのが領収書です。 クリニックによって発行様式が異なるため、支払いのたびに次の項目が入っているかを確認してください。

  • 支払年月日
  • 宛名(本人または家族の氏名)
  • 金額(税込表示か、内訳がわかるか)
  • 施術・治療内容がわかる名称
  • 発行者(クリニック名・所在地)

とくに美容クリニックでは、領収書に「治療内容」ではなく「コース名」など施術メニュー名だけが記載されることがあります。 医療費控除を検討している場合は、診断名や治療目的がわかる書面(診断書・説明書など)もあわせて保管しておくと、 後から治療目的だったことを説明しやすくなります。

04確定申告の手続き

2017年分の確定申告以降、領収書そのものを税務署へ提出する必要はなくなりました。 代わりに「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付します(国税庁タックスアンサーNo.1119)。 国税庁サイトの「医療費集計フォーム」(Excel)に入力し、確定申告書等作成コーナーに取り込むと、 明細書が自動作成されます。マイナポータル連携を使えば、医療費通知情報を自動入力できる場合もあります。

領収書は提出不要でも、確定申告期限から5年間は自宅で保存する義務があります。 税務署から提示・提出を求められることがあるため、申告後もすぐに処分しないでください。

よくある質問

美容整形やヒアルロン酸・ボトックスは医療費控除の対象になりますか?

見た目を整えること自体を目的とした施術(美容目的)は、原則として医療費控除の対象になりません。国税庁は歯列矯正に関する質疑応答事例で「容姿を美化し、又は容ぼうを変えるための費用」は対象外という考え方を示しており、この考え方は美容医療全般の判定でも参照されます。一方で、外傷や病気の治療・機能障害の改善を目的とした施術は、実施した施設が美容クリニックであっても対象になり得るとされます。個別の施術が対象になるかどうかは、最終的に税務署・税理士に確認してください(国税庁タックスアンサーNo.1122)。

控除額はどうやって計算しますか?

「実際に支払った医療費の合計額 − 保険金などで補填された金額 − 10万円」で計算します。その年の総所得金額が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」を差し引きます。控除額の上限は200万円です(国税庁タックスアンサーNo.1120)。

家族の分の費用も合算できますか?

自分だけでなく、生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も合算できます。同居していなくても、生活費の仕送りなどで生計を一にしていれば対象になり得ます(国税庁タックスアンサーNo.1120)。

領収書は確定申告のときに提出しますか?

2017年分の確定申告以降、税務署への提出は原則不要になりました。ただし「医療費控除の明細書」の作成に使うほか、確定申告期限から5年間は自宅で保存する義務があります。税務署から提示・提出を求められることがあります(国税庁タックスアンサーNo.1119)。

領収書がもらえなかった場合はどうすればいいですか?

支払いの都度、領収書を受け取っておくのが基本です。クリニックによって発行様式が違うため、施術名・支払日・金額・宛名が入っているかをその場で確認してください。万一もらい忘れた場合は、クレジットカードの利用明細などで支払いの事実を示せることがありますが、扱いは税務署の判断によります。

この記事の内容だけで確定申告してもいいですか?

本記事は国税庁の公開情報をもとにした一般的な整理であり、個別の税務相談ではありません。実際に控除できるかどうかは、施術の内容・目的・金額によって判断が分かれます。申告前に税務署または税理士に確認することをおすすめします。

本記事は国税庁が公開する一次情報にもとづく一般的な整理であり、税務相談・税務代理には当たりません。 施術が医療費控除の対象になるかどうかは、施術の内容・目的・診断名によって個別に判断されます。 実際の申告にあたっては、税務署または税理士にご確認ください。施術の要否・適応は医師にご相談ください。

申告前に、領収書はそろっている?

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