ピコレーザー
1兆分の1秒を意味する「ピコ秒」という単位が、シミ治療の機種選びを語るうえでの共通言語になっている。ナノ秒(10億分の1秒)からピコ秒へと照射時間が短くなることで、狙った色素粒子だけをより選択的に破砕しやすくなる、というのがこのカテゴリの基本の理屈である。
この章では、国内で承認を得ている3機種——ディスカバリーピコプラス、PicoWay(ピコウェイ)、ピコシュアプロ——を、波長構成・承認適応・海外での取り扱いという3つの軸で並べて読み解く。
3機種はいずれも「ピコ秒レーザー」という同じカテゴリに属しながら、搭載する波長の数や組み合わせ、添付文書に明記された使用目的の書きぶりが異なる。この違いを理解することが、機種名だけで語られがちなこのカテゴリを正しく読むための出発点になる。
ピコ秒レーザーの仕組みと、承認適応という別軸
ピコ秒とは、1秒を1兆分の1に分けた単位です。この章で扱う3機種はいずれも、色素の粒子にごく短い時間だけ強い光エネルギーを与え、粒子を細かく砕く「Qスイッチ」という仕組みを土台にしています。照射時間がナノ秒(10億分の1秒)からピコ秒へと短くなるほど、理屈のうえでは熱が周辺の皮膚組織へ伝わる前に照射が終わるため、狙った色素だけを狙いやすいとされています。
ただし「ピコ秒だから安全」「ピコ秒だから効く」という単純な話ではありません。各機種は複数の波長(色によって吸収されやすい光の色が違う)を切り替えられるように設計されており、赤・紫・黄・青・黒など病変の色調に応じて波長を選ぶ運用が前提になっています。波長の組み合わせ・パルス幅の設計・照射モードの違いが、各機種の個性を作っています。
もう一つ重要なのが、機種の性能と国内での承認適応は別軸だという点です。同じ「ピコ秒レーザー」というカテゴリでも、添付文書に明記された使用目的・適応疾患は機種ごとに異なります。承認された使い道の外で照射する場合は、各院の判断による自由診療(オフラベル)運用になります。
機種・製剤一覧
| 名称 | メーカー(国) | 承認状況 | 主な適応 | 相場 |
|---|---|---|---|---|
| ディスカバリーピコプラス | Quanta System S.p.A.(イタリア) | 国内承認 確認日 2026-07-12 | 刺青(タトゥー)除去、太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着症、扁平母斑、表皮・真皮の色素性病変 | 価格DB → |
| ピコセカンドKTP/Nd:YAGレーザー PicoWay(ピコウェイ) | シネロン・キャンデラ株式会社(製造販売業者)/製造業者はキャンデラコーポレーション(Candela Corporation, 米国)(アメリカ合衆国(製造業者Candela Corporation)。製造販売業者は日本法人シネロン・キャンデラ株式会社(東京都中央区銀座)) | 国内承認 確認日 2026-07-12 | 体表面の深在性及び浅在性色素性病変の治療(添付文書の正式な使用目的・効果の記載どおり)、刺青(タトゥー)の除去(添付文書の正式な使用目的・効果の記載どおり)、太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着症へのQスイッチ付レーザー照射療法としての保険算定(メーカー公式サイトに記載。添付文書の使用目的欄そのものには疾患名の明記はない)、肝斑への使用(添付文書上の適応外、低出力照射=ピコトーニングでの自由診療運用が実態として広く行われている)、美肌・毛穴治療目的の照射(添付文書に記載のない適応外の自由診療運用) | 価格DB → |
| ピコシュアプロ | Cynosure(製造)/サイノシュアー・ルートロニック株式会社(製造販売)(米国) | 国内承認 確認日 2026-07-12 | 体表面の表在性及び深在性良性色素性病変、太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着、入墨(刺青)の蒸散・除去、(海外適応)肝斑・シミ様色素病変 | 価格DB → |
機種・製剤の解説
ディスカバリーピコプラス
国内承認 確認日 2026-07-12Qスイッチを付加したNd:YAGレーザー(波長532nm・1064nm)と、Qスイッチルビーレーザー(波長694nm)を選択して照射する装置。添付文書の仕様欄によれば、532nm/1064nmのNd:YAGレーザーはパルス幅を数ナノ秒(6ns)、及び数百ピコ秒(532nm:370ps、1064nm:450ps)の中から選択できる。一方694nmのルビーレーザーはパルス幅30ns固定で、ピコ秒モードは搭載されていない(ナノ秒のみ)。皮膚内の色素粒子に短パルスの光エネルギーを与えて破砕する仕組みで、3波長を使い分けることで赤・紫・黄・青・黒など幅広い色調の色素に対応する。
承認状況:高度管理医療機器・特定保守管理医療機器・設置管理医療機器(クラスIII)として国内承認されています(PMDA添付文書で実物確認済)。添付文書の使用目的は「刺青及び色素性病変の蒸散及び除去」で、694nmの推奨適応欄に太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着症・扁平母斑等が例示されています。老人性色素斑(いわゆるシミ)は推奨適応欄に個別記載がなく、肝斑は逆に有害事象欄に「肝斑の増強」として言及されるのみで適応としては明記されていません。美容クリニックで一般的なこれら疾患への使用は各院の裁量による可能性があります(unknown)。
ディスカバリーピコプラスは、Qスイッチルビーレーザー(694nm・ナノ秒固定)とQスイッチNd:YAGレーザー(532nm/1064nm・ピコ秒/ナノ秒切替可)の2系統3波長を1台に収めた構成が特徴です。添付文書の使用目的は「刺青及び色素性病変の蒸散及び除去」で、694nmの推奨適応欄には太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着症・扁平母斑などが具体的に例示されています。
一方で、いわゆる老人性色素斑は推奨適応欄に個別の記載がなく、肝斑はむしろ有害事象欄に「肝斑の増強」として言及されるにとどまり、適応としては明記されていません。美容クリニックでこれらの疾患に照射する場合、各院の裁量による運用になっている可能性がある点は、教材として押さえておきたいところです。米国では2019年にFDA 510(k)承認を取得しており、価格DBでは20院が掲示価格を公開する、導入の広がった機種です。
出典
- 製品一覧|DISCOVERY PICO PLUS(ビッグブルー株式会社(国内販売業者)、確認日 2026-07-12)
- Discovery Pico, Discovery Pico Plus, Discovery Pico Derm by Quanta System, S.p.A. | FDA 510(k) Summary (K191842, decision date 2019-09-17)(FDA 510(k) database (Innolitics)、確認日 2026-07-12)
- ディスカバリー ピコ プラス 添付文書(承認番号30200BZI00018000)(PMDA(医薬品医療機器総合機構)、確認日 2026-07-12)
ピコセカンドKTP/Nd:YAGレーザー PicoWay(ピコウェイ)
国内承認 確認日 2026-07-12532nm・730nm・1064nmの3波長を照射するフラッシュランプ励起式Nd:YAGレーザー装置。パルス幅は532nm:294ps、730nm:246.8ps、1064nm:339psと数百ピコ秒オーダー。532nmは10×10配列のマイクロビームに分割するフラクショナル照射も可能。皮膚の色素(メラニン)や刺青の色素粒子への光音響効果を利用する方式。
承認状況:PMDA添付文書(第1〜4版)を直接確認しました。【使用目的又は効果】欄の記載は「本品は、体表面の深在性及び浅在性色素性病変の治療並びに刺青の除去を目的とした装置」という文言のみで、太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着症といった疾患名や保険算定の可否は添付文書自体には明記されていません(この情報はメーカー公式サイトの記載に基づきます)。肝斑・美肌・毛穴目的の照射は添付文書に記載がなく適応外(自由診療)です。禁忌は皮膚悪性腫瘍がある部位、光線過敏症のある患者、単純ヘルペス活動性病変部位、開放創・感染状態の皮膚の4項目です(添付文書【禁忌・禁止】欄で確認)。乳幼児・小児への安全性は確立されていない旨の記載があります。製造販売業者はシネロン・キャンデラ株式会社、製造業者はキャンデラコーポレーション(米国)です。
PicoWayは532nm・730nm・1064nmの3波長を扱うNd:YAGレーザーで、532nmはマイクロビームに分割するフラクショナル照射にも対応します。添付文書の使用目的は「体表面の深在性及び浅在性色素性病変の治療並びに刺青の除去」というシンプルな一文で、太田母斑などの疾患名や保険算定の可否そのものは添付文書に明記されていません(これらはメーカー公式サイト側の記載に基づく情報です)。
肝斑や毛穴を目的とした照射(いわゆるピコトーニング)は添付文書に記載のない適応外の自由診療運用が実態として広く行われている、という点は編集部として注記しておく必要があります。禁忌は皮膚悪性腫瘍のある部位・光線過敏症・単純ヘルペス活動性病変・開放創や感染状態の皮膚の4項目が添付文書に明記されています。価格DBでは19院が掲示価格を公開しています。
出典
- ピコセカンドKTP/Nd:YAGレーザーPicoWay薬事承認取得のご案内(Candela K.K.(プレスリリース配信、2018年10月29日付)、確認日 2026-07-12)
- PicoWay(ピコウェイ) | シネロン・キャンデラ | 皮膚治療(Candela K.K.、確認日 2026-07-12)
- ピコセカンドKTP/Nd:YAGレーザー PicoWay 添付文書(医療機器承認番号:23000BZX00270000)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)、確認日 2026-07-12)
ピコシュアプロ
国内承認 確認日 2026-07-12波長755nmのフラッシュランプ励起式アレキサンドライトレーザで、ポッケルス現象(Qスイッチ、パルス幅500〜900ピコ秒という超短時間でレーザを発振させる仕組み)により極めて短いパルス光を照射する。照射された光は皮膚内の標的色素(メラニンや刺青インクなど)に選択的に吸収され、熱破壊する。
承認状況:メーカー公式サイト(サイノシュアー・ルートロニック)のPicoSure Pro製品ページに医療機器承認番号「30500BZX00079000」が明記され、太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着が保険適応疾患として列挙されています。PMDA添付文書ページ自体(info.pmda.go.jp)は今回WebFetch/curlとも404で本文を直接再確認できませんでした(SPA構成のため単純取得不可と推定、検索結果のページタイトルでは同一承認番号・機種名が確認できます)。保険適用開始日(令和5年5月1日など)は他の独立情報源で裏付けが取れず今回削除しました。シミ・肝斑・毛穴・ニキビ跡などの美容目的適応は国内承認適応に含まれず、承認適応外の自由診療にあたります。
ピコシュアプロは波長755nmのアレキサンドライトレーザー1波長に絞った設計で、パルス幅500〜900ピコ秒というポッケルス現象を用いた発振方式を採用しています。メーカー公式サイトには医療機器承認番号が明記され、太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着が保険適応疾患として列挙されている点は、他の2機種と並べて読むと承認情報の開示のされ方の違いが見えてきます(PMDA添付文書ページ自体は今回直接確認できておらず、この点は編集部として留保します)。
シミ・肝斑・毛穴・ニキビ跡といった美容目的の適応は国内承認の範囲に含まれず、オフラベル(自由診療)運用です。海外ではメーカー自身が「肝斑・太田母斑・Hori母斑治療に対応する唯一のFDAクリア済みピコ秒デバイス」と説明していますが、これは海外での位置づけであり国内の承認適応と同一視はできません。価格DBでは18院が掲示価格を公開しています。
出典
- PicoSure Pro ピコセカンドレーザ 添付文書(検索結果ページタイトルのみ確認、本文未再取得)(PMDA(医薬品医療機器総合機構)、確認日 2026-07-12)
- PICOSURE®pro - ピコシュアプロ(サイノシュアー・ルートロニック株式会社、確認日 2026-07-12)
- PicoSure Pro(Cynosure、確認日 2026-07-12)
- ピコシュア®プロ(PicoSure®PRO:ピコレーザー)(板橋区成増駅前かわい皮膚科、確認日 2026-07-12)
承認適応をどう読むか — 「ピコ秒だから」で終わらせない
添付文書の「使用目的又は効果」欄は、機種ごとに書きぶりが大きく異なります。ディスカバリーピコプラスとPicoWayは694nmや532nm/1064nmの推奨適応欄に太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着症といった疾患名が例示される一方、いわゆる老人性色素斑や肝斑は個別の適応として明記されていません。
この「明記されていない」という事実は、効かないという意味ではなく、承認の枠組みの外で各院の裁量により運用されている(自由診療)ことを示しています。カウンセリングで疾患名と適応の対応を確認する習慣は、患者にとっても働き手にとっても欠かせません。
ピコシュアプロのように、メーカー公式サイト側に保険適応疾患の列挙があっても添付文書そのものを一次資料として直接確認できないケースもあります。出典の階層(添付文書か、メーカー公式サイトか)を意識して情報を受け取る姿勢が、このカテゴリを読み解くうえで重要です。
波長構成の違いをどう見るか
ディスカバリーピコプラスは694nm(ルビー・ナノ秒固定)と532nm/1064nm(Nd:YAG・ピコ秒/ナノ秒切替)の2系統3波長、PicoWayは532nm・730nm・1064nmの3波長、ピコシュアプロは755nm(アレキサンドライト)の単一波長という、それぞれ異なる設計思想を持っています。
波長が多いほど幅広い色調の色素に対応しやすいという理屈がある一方、単一波長に特化した設計にもそれぞれの狙いがあります。どちらが優れているかを一概に断定することはできず、対象となる病変の色調や深さに応じて使い分けられているのが実情です。
来院前・導入前に確認したい観点
- 自分が気になっている色素病変(老人性色素斑か、太田母斑・扁平母斑のような先天性のものか、刺青か)は、その機種の承認適応に含まれているか
- 肝斑がある場合、その機種のピコトーニングは添付文書上の正式な適応ではなく自由診療の運用であることを理解しているか
- カウンセリングで波長(694nm/755nm/532nm・1064nm等)や照射モードの説明があるか、それとも「ピコレーザーだから効く」という一括りの説明で終わっていないか
- 保険算定が可能な病名(太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着症など)に該当するかどうかで費用感が大きく変わる点を確認したか
- 導入院数や口コミの多さは、承認適応や安全性の裏付けとは別物だと理解しているか
- 働き手としてこの機種を扱う場合、添付文書の禁忌(悪性腫瘍のある部位・光線過敏症・感染創など)をカウンセリングで確認するフローが院にあるか
よくある質問
- ピコ秒レーザーとナノ秒レーザーは何が違うのですか
- 照射時間の単位が違います。従来のQスイッチレーザーはナノ秒(10億分の1秒)単位でしたが、ピコ秒レーザーはその1000分の1にあたるピコ秒(1兆分の1秒)単位でエネルギーを与えます。この章で扱う3機種も、パルス幅はおよそ250〜900psの数百ピコ秒台に設計されています。理屈のうえでは照射時間が短いほど周辺組織への熱の広がりを抑えやすいとされますが、実際の仕上がりは波長・出力・術者の設定にも左右されるため、機種名だけで優劣を語ることはできません。
- ピコレーザーならどのシミにも効くのですか
- いいえ。この章の3機種はいずれも添付文書の使用目的が「色素性病変」「刺青の除去」といった書き方にとどまり、老人性色素斑(いわゆる茶色いシミ)や肝斑を個別の適応として明記していない場合があります。太田母斑・異所性蒙古斑・外傷性色素沈着症のように保険算定できる病名と、自由診療で運用されている美容目的の照射は別物として区別して考える必要があります。
関連ページ
章の出典
- 製品一覧|DISCOVERY PICO PLUS(ビッグブルー株式会社(国内販売業者)、確認日 2026-07-12)
- Discovery Pico, Discovery Pico Plus, Discovery Pico Derm by Quanta System, S.p.A. | FDA 510(k) Summary (K191842, decision date 2019-09-17)(FDA 510(k) database (Innolitics)、確認日 2026-07-12)
- ディスカバリー ピコ プラス 添付文書(承認番号30200BZI00018000)(PMDA(医薬品医療機器総合機構)、確認日 2026-07-12)
- ピコセカンドKTP/Nd:YAGレーザーPicoWay薬事承認取得のご案内(Candela K.K.(プレスリリース配信、2018年10月29日付)、確認日 2026-07-12)
- PicoWay(ピコウェイ) | シネロン・キャンデラ | 皮膚治療(Candela K.K.、確認日 2026-07-12)
- ピコセカンドKTP/Nd:YAGレーザー PicoWay 添付文書(医療機器承認番号:23000BZX00270000)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)、確認日 2026-07-12)
- PicoSure Pro ピコセカンドレーザ 添付文書(検索結果ページタイトルのみ確認、本文未再取得)(PMDA(医薬品医療機器総合機構)、確認日 2026-07-12)
- PICOSURE®pro - ピコシュアプロ(サイノシュアー・ルートロニック株式会社、確認日 2026-07-12)
- PicoSure Pro(Cynosure、確認日 2026-07-12)
- ピコシュア®プロ(PicoSure®PRO:ピコレーザー)(板橋区成増駅前かわい皮膚科、確認日 2026-07-12)