施術えらび 05

ヒアルロン酸の値段はなぜ10倍違う?
製剤・単価・追加費用の読み方

ヒアルロン酸は「1ccいくら」だけで比べると失敗しやすい施術だ。 実際の価格表には8千円台から10万円超まで並び、製剤名・承認状況・追加費用・必要量で総額が変わる。 安すぎる数字にも、高く見える数字にも理由がある。価格表の読み方を整理した。

施術えらび 05 美容医療ラボ編集部 初出 2026.06

§1 「1cc」は単位であって、商品名ではない

クリニックの価格表を開くと、同じ「ヒアルロン酸 1cc」の行が何段も並んでいて、いちばん上といちばん下で値段が10倍近く違う。初めて見ると、どれを選べばいいのか分からなくなる——でも、この差にはちゃんと正体がある。

正体は製剤。ひと口にヒアルロン酸といってもメーカーもグレードも様々で、硬さ(架橋度)や粒子サイズが違えば、向く部位も持ちも変わる。柔らかい製剤は唇・涙袋など動きの出る部位、硬い製剤は鼻・顎など形を支えたい部位——この使い分けが、そのまま値段の段差になっている。

「1cc」は量の単位であって、商品の名前ではない。

FIG. 01 — 製剤グレードと価格の段差

ベーシック 柔らかめ — 唇・涙袋など動きのある部位
1万円前後〜3万円台 / 1cc
架橋度が低く、柔らかい。形を支えるより自然なボリュームに向く。
スタンダード 汎用 — ほうれい線・頬など
3万円台〜7万円弱 / 1cc
幅広い部位に使われる。国内承認品でも複数グレードが存在する。
ハイグレード 硬め — 鼻・顎など形を支えたい部位
8万円台〜10万円超 / 1cc
架橋度が高く、形を維持しやすい。対応できる部位が限られる。
東京大手6院の実勢レンジ(2026年6月調査・1ccあたり)。製剤グレードが価格差の主因。詳細はヒアルロン酸(ほうれい線)の値段を大手6院で比較【2026年6月調査】

§2 製剤名を揃えて比較する意味

じゃあ、どう比べるか。コツはひとつだけ——「製剤名を揃える」。同じ国内承認製剤でも、院によって1cc単価は1.5倍ほど違うことがある。逆に言えば、製剤名さえ揃えば、ヒアルロン酸は美容医療では数少ない「ちゃんと横並びで比較できる」施術になる。

手強いのは、製剤名が書かれていない「ヒアルロン酸注入 ◯万円〜」という格安メニューのほう。何が・何cc入るのか分からない価格は、安いのか高いのかの判定すらできない。

比較するなら「製剤名×cc数×総額」の3点セットで揃える。

実際にどの製剤がいくらで並んでいるかは、ヒアルロン酸(ほうれい線)の値段を大手6院で比較【2026年6月調査】で確認できる。同じ製剤の院間差も、製剤名のない格安メニューの実例も、そこに載せた。

FIG. 02 — 同一製剤の院間差の実例

ジュビダームビスタ ボリューマXC 1cc(国内承認製剤・通常価格)

湘南美容クリニック
57,200円
品川美容外科
69,800円
城本クリニック
85,000円
出典: ヒアルロン酸(ほうれい線)の値段を大手6院で比較【2026年6月調査】

FIG. 03 — 製剤名なし vs 製剤名あり

製剤名なしメニュー
ヒアルロン酸注入 ◯円〜
  • 製剤グレードが不明
  • 注入量が不明
  • 追加費用の構造が不明
安いのか高いのか、判定できない
製剤名ありメニュー
製剤名 + 1cc単価 + 内訳明示
  • 同製剤の院間比較が可能
  • 追加費用の差を把握できる
  • 総額を事前に計算しやすい
院をまたいで比較できる
比較するなら「製剤名 × cc数 × 総額」の3点セットで揃える。

§3 承認状況の確認が必要な理由

もうひとつ、価格表からは見えないけれど知っておいてほしいことがある。同じ表に並んでいる製剤の中に、厚生労働省が承認したものと、海外(韓国KFDAなど)でだけ承認された国内未承認のものが混ざっていることがある——そして、どれがどちらかは価格表に書かれていないことが多い。

未承認だから危険、という話ではない。医師が個人輸入して使うこと自体は認められている。ただ、制度の上ではっきり違う点がひとつある。万一副作用が起きたとき、国内承認製剤なら「医薬品副作用被害救済制度」の対象になりうるが、未承認製剤は対象外——ここは知った上で選びたい。

聞き方は簡単。「この製剤は国内承認ですか?」——この一言だけでいい。

FIG. 04 — 国内承認 vs 未承認

国内承認製剤
厚生労働省が審査
  • 有効性・安全性を国内審査
  • 製品情報・副作用報告が公開
  • 代表例: ジュビダームビスタ シリーズ、レスチレン シリーズ
副作用被害救済制度の対象になりうる
未承認製剤
海外当局のみの承認 / 医師の個人輸入
  • 国内審査は未実施
  • 承認国でのデータはある
  • 価格が安い傾向もある
副作用被害救済制度の対象外

未承認=危険ではない。制度が違う。

聞き方はこれだけ——「この製剤は国内承認ですか?」
副作用被害救済制度の詳細はPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のウェブサイトで確認できます。

§4 追加費用で総額が変わる構造

最後は地味だけど、当日の会計に効いてくる話。広告で見た「1cc ◯万円」と、実際に払う金額は同じとは限らない。

代表的な上乗せは麻酔と注入器具。表面麻酔(クリーム麻酔)を施術代に含む院もあれば、神経ブロック麻酔が別料金(数千円〜2万円規模)の院もある。マイクロカニューレ(先端が丸い注入器具。内出血や傷が残りにくいとされる)も、込みの院と別料金の院に分かれる。

もうひとつ、注入した製剤の「残り」の扱いも院で違う。1本使い切り・残量廃棄の院もあれば、残量を保管する院もある。開封済み製剤の再使用は感染リスクの観点が絡むので、方針は施術前に聞いておきたい。

広告の1cc価格と当日の総額は別物——内訳は見積もりの段階で。

FIG. 05 — 総額の積み上げ

起点
広告の1cc価格(製剤代)
+
麻酔(表面 / 神経ブロック)
込み〜2万円
+
マイクロカニューレ
込み〜数千円
+
初診・再診料など
院によって異なる
=
当日の総額
見積もりで聞く一言:「この金額に麻酔・器具・診察料は入っていますか?」
院によって「込み」か「別料金」かが異なる。広告の1cc価格と当日総額は別物。

FIG. 06 — 価格表を読む3ステップ

価格表で「製剤名」を探す
製剤名の記載がなければ、比較は保留
「国内承認ですか?」と聞く
制度の違いを確認する一言
総額の内訳(麻酔・器具・診察料)をもらう
広告価格と当日総額のズレをゼロにする
この3問で「高い・安い・制度の違い」を把握できる。

§5 カウンセリングでこのまま聞く質問リスト

そのままコピーして使ってください。

01

「使用する製剤名を教えてください。国内承認製剤ですか?」

— 製剤名と承認状況の確認。「承認製剤との違いは何ですか」も合わせて聞く

02

「この部位に何ccが適切と判断しましたか?その根拠は?」

— 「1ccが標準」という説明だけでは不十分。部位・骨格ごとの根拠を聞く

03

「今日の見積もりに麻酔・器具・診察料は含まれていますか?内訳を教えてください」

— 広告価格と当日総額のズレを事前に把握する

04

「1本使い切りですか?残量はどう扱いますか?」

— 開封済み製剤の保管・再使用ポリシーを確認する

05

「持続期間の目安と、期間が終わったら何が起きますか?」

— 「徐々に吸収される」「形が崩れることがある」等、部位によって挙動が異なる

06

「今日決めなくても大丈夫ですか?検討してから連絡できますか?」

— 持ち帰りを断る院・当日限定価格を提示する院は一度立ち止まる

よくある質問

「国内承認製剤」と「未承認製剤」は何が違うのですか?

国内承認製剤は厚生労働省が有効性・安全性を審査して承認した製品です。未承認製剤は日本国内では未承認ですが、韓国KFDA等の海外当局が承認しているケースが多く、医師が個人輸入によって使用することが法律上可能です。万一副作用が起きた場合、国内承認製剤なら「医薬品副作用被害救済制度」の対象となりますが、未承認製剤は同制度の対象外になります。カウンセリングで「この製剤名は何か、国内承認か」を聞いておきましょう。

ヒアルロン酸は「1cc」で十分ですか?

必要量は部位・元の骨格・希望する仕上がりによって大きく異なります。1ccが標準的な目安として示されることがありますが、足りなかった場合の追加や、注入しすぎによる圧迫・膨らみすぎのリスクも存在します。カウンセリングで「この部位に何ccが適切か、その根拠は」と聞いてください。

麻酔はオプション料金になることが多いのですか?

院によって異なります。表面麻酔(クリーム麻酔)を施術代に含む院もあれば、神経ブロック麻酔を別料金で設定している院もあります。広告価格に麻酔が含まれているかどうかは、見積もり時に確認してください。麻酔の種類(表面麻酔・神経ブロック)によって痛みの軽減度も異なります。

ヒアルロン酸の持続期間はどのくらいですか?

持続期間は製剤の種類・部位・注入量・個人の代謝によって異なります。一般に数か月〜1年以上とされることが多いですが、院やメーカーが示す数値はあくまで目安です。「使い切り・残量廃棄」方針の院もあれば、残った製剤を保管・再使用する院もありますが、開封後の製剤を再使用する院もあり、感染リスクが絡みます。残量をどう扱うかは施術前に聞いてください。

※このページは一般的な情報をまとめたものです。施術の適応・リスク・費用は医師の診察とカウンセリングで確認してください。効果・持続期間・ダウンタイムには個人差があります。「〜とされる」「〜の目安」「〜の可能性」という表現は一般的な傾向の整理であり、個人に対する医療アドバイスではありません。特定の施術・クリニックを推奨するものではありません。未承認製剤の使用については医師に詳細をお確かめください。

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